はじめに:WEB担当者が最初に取り組むべき「ディレクション業務」
EC・通販事業のWEB担当者に任命されたら、まず最初に行うべき仕事が「WEBサイトのディレクション」です。
ネットショップは、実店舗と異なり「手に取る」「香りを嗅ぐ」「スタッフに相談する」といった体験ができません。そのため、ユーザーが迷わず購入できる導線設計や、商品に魅力を感じてもらえる見せ方の工夫が非常に重要です。
仮に取り扱う商品に強みがあっても、使いづらいUIやごちゃごちゃした構成では、離脱率が高まり、購入には至りません。
「買いたくなる設計」「不安を解消する情報の配置」「スマホでも快適なレイアウト」などを意識して、WEBサイト全体を設計・監督するのが、ディレクション業務の役割です。
ディレクションとは「現場監督+設計士」のような存在
WEBサイトのディレクションとは、サイト構成やデザインの方向性を考え、それをもとにデザイナーやエンジニア(コーダー)と連携しながら、最終的なページを完成させるまでの一連の工程を統括することです。
わかりやすく言えば、建築業界における「設計士」と「現場監督」を兼ねたようなポジション。
- 「どんなユーザーに向けて」
- 「どんな見せ方で」
- 「どんな順番で情報を出すか」
を考えるのがWEBディレクションの基本です。
これを専門職とするのが「WEBディレクター」ですが、小規模な通販サイトでは担当者がディレクター業務を兼任するケースも多く見られます。
最新トレンド1:モバイルファーストのUX設計
2025年現在、ECサイトへのアクセスの7割以上はスマートフォンからです。
そのため、PCサイトを先に設計してスマホに「落とし込む」方法ではなく、スマホファーストの設計(モバイルファーストUX)がスタンダードとなっています。
- ボタンの大きさは指で押しやすいか?
- スクロール量が多すぎて途中で離脱しないか?
- ファーストビューで信頼性が伝わっているか?
このような視点で、スマホユーザーが快適に閲覧・購入できる体験設計が求められます。
最新トレンド2:LPO(ランディングページ最適化)視点の強化
広告やSNSから流入したユーザーが最初に訪れるのが「LP(ランディングページ)」です。
特に新規顧客獲得では、最初の数秒で興味を持ってもらえるかがカギとなるため、LP制作においてもディレクションの精度が問われます。
- どのファーストビューが最も離脱が少ないか?
- キャッチコピーとビジュアルの整合性は取れているか?
- 「購入までの流れ」がスムーズか?
これらをワイヤーフレーム段階から見据えて設計することが、今のディレクターに求められる視点です。
ディレクションの要:ワイヤーフレームの設計
WEBディレクション業務の中で、大きなウェイトを占めるのが「ワイヤーフレーム(設計図)」の作成です。
これは、WEBページの構成や情報配置を可視化した図面で、デザイナーやエンジニアに「このような構成で作ってほしい」と伝えるための重要なツールです。
ワイヤーフレームは手書きでもOK
専用のデザインツールを使う必要はありません。ExcelやPowerPoint、あるいは手書きでも構いません。大切なのは以下の2点です。
- 「伝えたいことの重みづけ(優先順位)」が整理されていること
- 「ユーザーが流れる動線」が視覚的に理解できること
見出し・画像・キャッチコピーなどが「読み飛ばしても伝わる」よう、設計段階で配慮しておくことが成果につながります。

出典: キラメックス株式会社
【実践編】お客様に刺さるLPを作るためのワイヤーフレームのコツ
① 情報の優先順位を明確にする
単に写真とテキストを順番に並べただけでは、見た人にとって何が重要なのか伝わりません。
- 一番伝えたい「ベネフィット」はどこに置く?
- 比較表やクチコミはどの段階で出す?
- 購入ボタンは何回登場させる?
このように、「何をどこで伝えるか」に優先順位をつけて構成することが大切です。
② デザインはしないが、トンマナは考える
ワイヤーフレーム自体は“設計図”なので、ビジュアルデザインは不要です。
ただし、ページの雰囲気や色合い(=トンマナ)はディレクター側である程度方向性を示す必要があります。
- メインカラーはなぜそれを選んだのか?
- 写真は清潔感?高級感?親しみやすさ?
- 書体は柔らかい?堅め?
こうした“理由を持った設計”こそが、プロのディレクションに欠かせません。
なお、最近ではPinterestやInstagramで「参考イメージをビジュアル共有」するスタイルが一般化しています。
最新トレンド3:生成AIツールとの連携
2025年のWEBディレクションで見逃せないのが、生成AIの活用です。
コピーのたたき台をAIに作らせたり、競合分析やペルソナ設計を支援するプロンプトも登場しています。
たとえば以下のような使い方が実践されています。
- LPのキャッチコピー案を複数生成し、A/Bテスト用に活用
- ペルソナ設計の補助として、ターゲットの検索意図を抽出
- ワイヤーフレーム上の要素配置案を生成させ、構成の参考に
ただし、すべてAI任せでは「芯を食った設計」にはなりません。あくまで発想の補助ツールとして活用するのが前提です。
最新トレンド4:アクセシビリティへの配慮と構造的設計
障がいや高齢のユーザーを含むすべての人が快適に使えるサイト設計が、ECでも重視されています。
- alt属性の記述で音声読み上げに対応
- 色覚障害への配慮(文字×背景のコントラスト)
- フォーム項目を適切にグループ化してストレス軽減
これらはSEO評価にも直結する項目です。ディレクションの段階から意識することで、長期的なブランド信頼にもつながります。
まとめ:売れるWEBサイトは、設計がすべて
WEBディレクションは、単なる“指示出し”ではありません。
- ユーザー心理を読み解き
- 適切な導線を描き
- 魅力が伝わる構成をデザインへ落とし込む
という高度な「戦略と設計」の仕事です。
モバイルファースト/LPO/生成AI/アクセシビリティといった最新の視点も踏まえながら、売れるECサイトを作るための“設計者”として、今こそディレクション力を磨きましょう。