「お客様目線で考えて」と言われても、正直なところどうしたらいいのか分からない。私たちが支援してきた中小企業のEC担当者からは、こんな声をよく聞きます。
「ページ構成を練ったつもりが、若い社員に『古くさい』と言われてしまった」「そもそも何を売りにしたらいいのか…」。特に男性中心のチームだと、若い女性顧客のニーズを捉えきれてないことって本当に多いです。
多様な価値観が共存する今、ただ漠然と「30代女性向け」と決めるだけでは刺さるマーケティングなんてできません。むしろそんな漠然としたイメージだけで判断すると、競合との差別化もできずに埋もれていくばかりです。
そこで注目されているのが「ペルソナマーケティング」という手法です。実は従来型のやり方と大きく違ってきていて、2025年の最新手法を知っているかどうかで成果も変わります。この記事では、実践的な活用法と最新トレンドをわかりやすく解説します。
ターゲットとペルソナ、実は全然違う
「ターゲット」という言葉、マーケティングでよく使われますよね。年齢、性別、職業、地域といった外的属性で「40代女性・東京都在住・パート主婦」みたいにグループ化することを指します。テレビCMや新聞広告が主流だった時代には、これで十分でした。だからこそマス広告の教科書にはいまだに書いてあります。
ただ、現代はそれでは足りません。
一方、ペルソナというのは、ターゲットを1人の具体的な人物像にまで深掘りしたもの。単なる属性ではなく、その人のライフスタイル、趣味や価値観、家族構成、どんなSNSを使っているか、何に悩んでいるのか——こういった生活感のある細部まで詳細に設計します。
ペルソナをきちんと設計すれば、実際に”その人”に向けた施策を考えられるようになるんです。
2025年のトレンド:「複数ペルソナ」と「LTV視点」が当たり前に
かつてのやり方だと「1ブランド=主力ペルソナ1人」が定番でした。うちはこの人のために作ってます、みたいな感じですね。でも正直、それでは今は通用しません。
2025年はマイクロペルソナ(細分化された複数の人物像)で考えるのが主流になっています。特にEC領域では「顧客がどれくらいの期間、どれくらいの金額を使ってくれるのか」を示すLTV(顧客生涯価値)という視点が必須になってきました。新規顧客と既存客では欲しい情報が全く違うし、買い物をやめてしまった人へのアプローチ方法だって別です。
| フェーズ | ペルソナ例 | マーケティング施策 |
| 新規顧客 | SNSから流入したZ世代女性 | SNS特化のバナー、動画広告、限定クーポン |
| リピーター | 定期購入している40代主婦 | メール、レビュー投稿依頼 |
| 離反予備群 | 3日前にカゴ落ちした男性 | LINE配信、リカバリー施策 |
ちなみに、この手法を導入した企業の多くが「リピーター層への対応を変えただけで購買額が30%上がった」と仰っています。単に商品がいいだけでなく、相手の状況に合わせた提案ができるかどうかが大切です。
AIと行動データで、ペルソナ設計が激変した
ここからが2025年ならではのポイント。
Google Analytics 4やClarityといった分析ツールとAIが融合して、ペルソナ設計は属人的な作業ではなく行動データに基づく設計へ進化してます。
具体例を挙げると:
Shopify × GA4の組み合わせなら、「カート放棄率が高い年代」「購買額が高い層の閲覧動線」が自動で抽出される。Karte(カルテ)やHubSpotといったMAツールではデータをスコアリングして、「このグループが好反応」というのを機械学習で自動判定してくれる。
結果、「誰に向けたコンテンツを強化すべきか」「どのグループが最も利益に貢献しているか」が数字で見える化される。勘に頼らず、事実ベースで判断できるようになったわけです。
このあたり、中小企業だと「ツール費用が高くて…」と敬遠する傾向があるんですが、Shopifyなら無料で基本的な分析はついてますし、Clarityも無料プランがあります。別に高度なことをしなくても、最初はこの程度で十分です。
ペルソナ設計で何が変わるのか
実感としては3つの効果が大きいです。
刺さるコンテンツに変わる
ペルソナなしだと「乾燥肌用美容液」みたいなフラットな商品説明になる。
でもペルソナで相手の悩みが見えてくると「夕方になると目元がつっぱるあなたへ。35歳からの保湿ケア習慣」こんな感じのコピーが生まれます。
共感のレベルが違う。営業トークではなく、友達からのアドバイスに近い感覚になるのです。
チームの判断がぶれなくなる
これも地味ですが重要です。
クリエイティブ案や広告文を作成するときに、「担当者の主観」だけで判断すると方向性が分裂しまいがちです。例えば、Aさんは「もっとポップに」、Bさんは「落ち着きが必要」みたいな感じです。ペルソナがあれば「〇〇さんならどう感じるか?」という共通の物差しで議論できる。判断がシンプルになります。
改善のスピードが上がる
施策の結果が「誰に響いたのか」見えるから、原因分析が楽になる。
A/Bテストでバナー2種類の反応が異なったときも、ペルソナの価値観と照らし合わせて「あ、この年代はこういう表現を好むんだ」と要因が分かる。迷いながらやるのと比べると、PDCAが圧倒的に回しやすいです。
では、実際にどうやって作るのか
素材は周りにいっぱい転がっています。
商品レビューやアンケートの記述回答、サイト内検索ワード、LINEに届く問い合わせ内容、SNSでのハッシュタグ投稿——お客様が自然に発信している情報ですね。これらを眺めていると「あ、こういう悩みが多いんだ」と見えてきます。
例えば、こんな感じで設計してみる:
- 名前:小野真由(仮名)
- 年齢:35歳
- 職業:時短勤務のワーキングマザー
- 家族:夫・小学2年の娘
- 行動:平日夜にスマホで買い物。土日は子ども優先で自分の時間は限定的
- ニーズ:コスパ・見た目・子育てとの両立ができること
それを実際の施策に落とし込むと、LPの導入文は「共感からスタート」させるとか、商品名を「用途やシーン」が伝わる名前にするとか、広告文は「課題解決」を強調するとか。細かいですが、これらが積み重なると反応が変わります。
ペルソナだけで十分ではない
ここまで読んでくれた方は気づいてるかもしれませんが、現在はペルソナとパーソナライズの融合が鍵になってます。
ペルソナで全体の方向性を決めつつ、実際の配信や表示では「個別最適化」を組み合わせる。つまり:
- Web接客ツールで過去の閲覧履歴に応じてバナーを差し替える
- メール配信で購入履歴別に件名を変える
- LINEでセグメント別に配信内容を変える
ペルソナが「チームの共通言語」になって、パーソナライズが「一人ひとりへの配慮」になる。この両立ができると、成果が大きく変わるんです。
結局、ここが勝敗を分ける
2025年は、商品のスペックだけで選ばれる時代ではありません。
「このブランド、私のことを分かってくれてる」「なんか私っぽい」——そういう感覚的なフィット感が購入に直結します。
その土台がペルソナ設計。
もし今「どんな言葉が刺さるか分からない」「社内で判断が割れてばかり」と感じたら、まずは1人の理想のお客様像をじっくり描いてみてください。それだけで、見える景色が変わります。
※ 「業種別ペルソナ設計テンプレート」や「レビュー分析から作る共感ワード抽出ガイド」などの支援資料は、提供に向けて準備中です。整い次第、ご案内させていただきます。