ネット通販の現場では、日々新しい技術や手法が登場しています。その中でも、WEB担当者に求められる「オリエン」や「制作進行」の業務は、時代とともに変化しつつあります。本記事では、2025年の最新トレンドを踏まえつつ、ネット通販WEBディレクション業務の実務ポイントを解説します。
オリエンとは?その目的と役割
ページ制作の前段階として、ワイヤーフレームが完成したら「オリエン(オリエンテーション)」を実施します。これは、デザイナーやコーダーといった実制作メンバーと意図を共有する場です。
オリエンの基本構成
- ページの”目的”(例:〇〇という商品の販売)
- “目標”(例:CV率3%以上)
- “メッセージ”(例:〇〇はハリと潤いを与える高保湿クリーム)
これらの要素を明確に伝えることで、「綺麗だけれど伝わらないデザイン」「注文導線が弱いLP」といった失敗を避けられます。関係者全員が同じゴールを意識できるように、丁寧に情報を共有しましょう。
【2025年版】オリエンに加えるべき最新トレンド
1. AIによる初期案作成の効率化
ChatGPTやClaudeなどを使って、構成案や初期ワイヤーフレームの“たたき台”を作る手法が一般化しています。Notion AIやMiro AIでは、過去の成功ページとの比較・構造分析も可能で、制作前の準備が効率化されています。
2. インクルーシブデザインの重視
アクセシビリティだけでなく、文化的背景や感覚の違いも考慮したインクルーシブデザインが注目されています。海外展開を見据える企業では、WCAG 2.2に準拠したUI設計が求められるケースも増えています。
3. AIによるペルソナ別構成案の生成
顧客属性に応じたパターン分けが可能になり、セグメント別のワイヤー案やコピー案を自動生成する動きも。UXライティングの分野でもAIが補助的役割を担い始めています。
制作進行の役割とは?
オリエンの後は、いよいよデザイン・コーディングの工程に進みます。しかし、WEB担当者の役割は終わりではありません。ここからは「制作進行」という重要な管理フェーズが始まります。
制作進行における主な業務
- スケジュールの作成・進捗確認
- デザインやコーディングの品質管理
- 社内外との調整
デザインは基本的に一発OKとはならないため、2〜3回のフィードバックループを見越したスケジュール管理が求められます。調整役としての柔軟性も不可欠です。
【2025年版】制作進行で注目の最新手法
1. 中小企業でも導入可能なデザインシステム
Figmaのテンプレート共有やコンポーネント機能が進化し、Atomic Designなどのデザインシステムを中小規模のECでも導入しやすくなっています。パーツ単位での管理が可能になり、整合性のあるUIを短納期で実現できます。
2. SEOに直結するLCP対策
Googleが重視するLCP(Largest Contentful Paint)の最適化は、もはや制作段階から意識すべき事項です。
- ファーストビューの画像をWebPやAVIFに圧縮
- 不要なCSS・JavaScriptの削除
- レイアウトシフトの抑制 といった対策が求められています。
3. CMS連携前提の構成設計
WordPressやShopifyなどのCMS導入を前提としたUI設計が一般化。編集画面から簡単に画像やテキストを差し替えられるよう設計することで、運用効率と属人性の低減を実現しています。
デザインレビューでのチェックポイント
制作物が仕上がってきたら、品質管理の視点でデザインレビューを行います。単なる”綺麗さ”ではなく、以下のような実用性も重要です:
- メッセージが直感的に伝わるか?
- ナビゲーションがわかりやすいか?
- スマホでの見やすさは十分か?
【2025年版】デザインレビューの最新トレンド
1. ヒートマップや録画セッションの事前設計
Figmaのモックに、SmartlookやMicrosoft Clarityで得たヒートマップを前提とした「視線誘導マーカー」を設定する手法が普及。視線の動きを意識したUI設計がレビュー基準になります。
2. 簡易ユーザビリティテストの活用
MazeやLyssnaといったクラウドサービスを活用することで、社内外のユーザーに簡易テストを実施し、定量的なフィードバックを即日で得ることが可能に。公開前の改善スピードが飛躍的に向上します。
3. GA4連携による改善サイクルの導入
Googleアナリティクス(GA4)やSearch Consoleで取得したユーザー行動データをFigmaレビューに組み込み、ページ改善のサイクルを高速化する企業も増えています。
すべての工程に通底する「スマホ特化設計」
GoogleのMFI(モバイルファーストインデックス)に完全対応するには、スマホでの最適化が最優先です。ページ設計・CTA配置・スクロール距離・画像サイズ・読み込み速度など、すべての指標を”モバイル”で最適化することが成果への近道です。
モーションUXでブランドらしさを表現
ブランドの世界観を伝える手法として、LottieやGSAPを用いた軽量モーション演出が増えています。読み込み速度やSEOに悪影響を与えず、リッチな体験をユーザーに提供できるため、多くの企業で導入が進んでいます。
まとめ:良いページは、良いプロセスから生まれる
オリエンから制作進行、そしてレビューに至るすべての工程において、関係者が目的・目標・メッセージを共有することが最も重要です。そのうえで、最新のツールや考え方を取り入れることで、より短時間で高品質なページ制作が可能になります。
WEBディレクションの現場は常に進化しています。日々の業務の中に、少しずつでも新しい視点を取り入れていきましょう。