【2025年版】楽天の手数料は本当に高い?利益を圧迫する”見えないコスト”と改善策

「売上は伸びているのに、手元に利益が残らない…」

楽天市場に出店している事業者の方から、このような相談を受けることが少なくありません。実際、私自身がEC企業の責任者として楽天店舗を運営していた時期にも、売上規模が拡大するほど利益率が下がるという矛盾に直面したことがあります。

多くの出店者が「楽天の手数料が高い」と感じる一方で、実は手数料以外にも利益を圧迫する”見えないコスト”が存在しています。広告費、送料負担、ポイント原資、物流費用——これらの変動費が積み重なり、気づかないうちに粗利を削っているのです。

ただしここで正直にお伝えすると、すべての店舗で利益構造を劇的に改善できるわけではありません。商品自体の競争力が不足している場合や、市場全体が価格競争に陥っている場合は、ページ改善だけでは限界があります。また、改善には時間がかかり、短期間で効果が出ることは稀です。

それでも、費用構造を見直し、地道な改善を続けることで、利益率を3〜8ポイント程度改善できる可能性はあります。

この記事では、15年以上のEC運営経験と実際の失敗から学んだ教訓をもとに、楽天市場で利益が残らない本当の理由と、利益率を改善するための具体的な対策をお伝えします。

目次

楽天の手数料が高いと感じる理由

楽天市場の手数料体系について、まず正確に理解しておくことが重要です。

楽天の基本的な手数料構造

楽天市場で発生する主な費用は以下の通りです:

固定費

  • 月額出店料:19,500円〜100,000円(プランによる)
  • システム利用料:月額固定

変動費(売上に応じて発生)

  • 楽天ポイント:通常1%
  • 楽天スーパーアフィリエイト:2.6%〜
  • 楽天ペイ決済手数料:月間決済高により変動
  • モールにおける取引の安全性・利便性向上のためのシステム利用料:0.1%

これらを合計すると、売上に対して概ね6〜13%程度の手数料が発生します。

売上に比例して増える変動費構造

楽天市場の費用構造で最も理解すべきポイントは、売上が伸びるほど変動費が増加する仕組みです。

例えば、月商300万円の店舗が月商1,000万円に成長した場合:

  • 手数料負担:約18万円 → 約60万円
  • ポイント原資:約3万円 → 約10万円
  • 合計:約21万円 → 約70万円

売上が3.3倍になると、これらの費用も3.3倍に増えます。原価率や固定費を考慮すると、実際の利益増加は売上増加率ほど伸びないケースが多いのです。

大手EC企業で責任者を務めていた際、売上目標達成に注力するあまり、利益率が徐々に低下していくという事態に直面しました。売上拡大と並行して、利益構造を常に見直す必要があると実感した経験です。

手数料以外の「隠れコスト」

楽天出店において、手数料以外にも利益を圧迫する要素があります:

① 広告費(RPP・クーポンアドバンス広告)

楽天市場では、検索結果で上位表示を獲得するために、RPP(楽天プロモーションプラットフォーム)広告の活用が欠かせません。

しかし、適切に運用しないと広告費が膨らみ、利益を圧迫します。私が見てきた店舗の中には、売上の15〜20%を広告費に使っているケースもありました。

ただし、広告費の適正水準は業種によって大きく異なります。食品など粗利率が高い商品では15%でも利益が出ますが、家電など粗利率が低い商品では5%でも厳しい場合があります。

② 送料負担

「送料無料」が当たり前になった現在、送料を店舗が負担するケースが増えています。商品単価が低い場合、送料負担が粗利を大きく削ります。

例えば、販売価格2,000円・原価率60%の商品の場合:

  • 粗利:800円
  • 送料負担:600円
  • 実質粗利:200円(粗利率10%)

③ ポイント原資(倍率アップ施策)

お買い物マラソンやスーパーセールなど、楽天のイベント時にポイント倍率を上げる店舗は多いですが、このポイント原資も店舗負担です。

ポイント10倍にした場合、通常1%のポイントが10%になり、実質9%の値引きと同じ効果になります。

④ 返品・交換対応コスト

見落とされがちですが、返品時の送料負担や再出荷コストも利益を削る要因です。特にアパレルやサイズ違いが起こりやすい商品では、返品率が高くなる傾向があります。

実際どのくらい手数料がかかるのかシミュレーション

結局これを全部合わせるとどうなるのかという話ですよね。

システムサービス利用料4.0%、アフィリエイトのジャンル料率4.0%(システム利用料30.0%)、楽天ペイ3.0%で計算してみます。

項目 計算式 金額
売上 10,000円
システムサービス利用料 10,000円 × 4.0% -400円
ポイント原資 10,000円 × 1.0% -100円
アフィリエイト手数料
└ パートナーへの報酬 10,000円 × 4.0% = 400円 -400円
└ 楽天へのシステム利用料 400円 × 30.0% = 120円 -120円
楽天ペイ利用料 10,000円 × 3.0% -300円
安全性向上利用料 10,000円 × 0.1% -10円
手数料合計 (実質料率 13.3%) -1,330円
手数料差し引き後の金額 8,670円

手数料だけで13%を超えています。ここからさらに原価、梱包材、人件費、月額料金が引かれます。
どうでしょう。最終的な利益、想像してたより少なくないでしょうか。

私たちが見てきた店舗でも、「売上は伸びてるのに利益が出ない」と悩んでいるケースの多くが、この手数料構造を正確に把握できていませんでした。

利益が出にくい店舗の共通点

15年以上EC運営に携わる中で、利益が出にくい店舗にはいくつかの共通パターンがあることに気づきました。

① 広告費過多で採算が合わない

よくある状況

「売上を伸ばすために広告費を増やし続けた結果、利益が残らない」という状態です。

私が支援したある店舗では、月商500万円に対して広告費が80万円(16%)かかっており、粗利率30%でも利益がほとんど残らない状態でした。

根本原因

  • 広告経由の売上に依存しすぎて、広告をやめると売上が落ちる構造になっている
  • 商品ページのCVRが低いため、広告費をかけても効率が悪い

② 粗利率が低く、利益が出る構造になっていない

よくある状況

競合との価格競争に巻き込まれ、値下げを繰り返した結果、粗利率が20%を切っている状態です。

根本原因

  • 価格でしか差別化できていない
  • 原価交渉や仕入れルートの見直しをしていない
  • 客単価を上げる施策(セット販売・まとめ買い)が弱い

競合店が値下げするたびに追随していた結果、カテゴリ全体の粗利率が下がり続けるという悪循環は「ECモールあるある」なのではないでしょうか。

③ 原価率の固定化と仕入れ交渉不足

販売規模が拡大しても、仕入れ原価が変わらないケースが多く見られます。

月商が100万円から1,000万円に成長しても、仕入れ条件が変わらなければ、利益率は改善しません。取引量が増えたタイミングで、メーカーや卸との原価交渉を行うべきです。

④ 利益構造を設計していない

最も大きな問題は、そもそも利益構造を設計していないことです。

「とにかく売上を伸ばす」ことに注力するあまり、以下のような視点が抜け落ちているケースが多く見られます:

  • 目標粗利率を設定していない
  • 広告費の上限(対売上比)を決めていない
  • 商品ごとの採算性を把握していない
  • 固定費を回収できる最低売上高を計算していない

ちなみに、そもそも「その商品は楽天で売るべきなのか?」という問題もあります。商品別、カテゴリ別で利益率を出してみてください。どの商品が楽天向きで、どれが向いてないか見えてきます。下記の参考記事でも触れていますので、合わせてお読みください。

参考記事→「脱モール」は間違い?EC事業者が本当に目指すべきゴールとは

参考記事→自社ECで利益率改善!楽天月商100万円の雑貨店がShopify併用で利益8万円増の事例

利益率を改善する3つの視点

ここからは、実務経験をもとに、利益率を改善するための具体的なアプローチをお伝えします。

① 費用対効果の見える化(ROI・ROAS)

まず取り組むべきこと:数値の可視化

利益改善の第一歩は、現状を正確に把握することです。以下の指標を商品別・施策別に計測しましょう。

ROAS(Return On Ad Spend)

ROAS = 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100

例:広告費10万円で売上50万円の場合、ROAS = 500%

目安として、ROAS 300%以上であれば広告効率は良好です。ただし、粗利率によって許容できる水準は変わります。

ROI(Return On Investment)

ROI = (売上 – 原価 – 広告費)÷ 広告費 × 100

ROIは実際の利益を基準にするため、より実態に近い指標です。

実践例

私が支援したある店舗では、商品ごとにROASを計測したところ、一部の商品は広告を出すほど赤字になっていることが判明しました。

その商品の広告を停止し、ROASの高い商品に予算を集中した結果、全体の利益率が改善しました。

② ページ改善によるCVR向上

広告費を削減する最も効果的な方法は、CVR(コンバージョン率)を改善することです。

ただし、CVR改善には限界もあります。商品自体の競争力が不足している場合や、価格が市場相場より明らかに高い場合は、ページを改善しても大きな効果は出ません。

それでも、CVRが0.5ポイント向上するだけでも、同じ広告費で売上が20〜30%増えることもあります。果たしてページ改善の成果が見込めそうか、見極めてから取り組むことが重要です。

RPP広告の最適化

楽天のRPP広告は、CVRが高い商品ほど効率よく運用できます。

私が実践している最適化の手順:

  1. 商品別のCVRを確認(RMS管理画面から取得)
  2. CVRが店舗平均より低い商品のページを改善
  3. 改善後のCVR変化を2週間単位で測定
  4. 効果が出た手法を他の商品にも横展開

訴求整理と情報設計

商品ページで最も重要なのは、ファーストビューで商品の価値を伝えることです。

私が大手EC企業の責任者時代に効果を確認した改善ポイント:

  • 商品の特徴を3つに絞り込む(情報過多は逆効果)
  • ベネフィット(顧客が得られる価値)を明確にする
  • 購入後のイメージが湧く使用シーン画像を配置
  • レビューを積極的に獲得し、信頼性を高める

③ 仕入れ・物流コストの最適化

仕入れ原価の見直し

販売実績が積み上がったタイミングで、仕入れ条件の再交渉を検討しましょう。

交渉のポイント:

  • 月間取引量の増加を根拠にする
  • 年間契約でのボリュームディスカウントを提案
  • 支払いサイトの短縮と引き換えに値引き交渉
  • 複数商品をまとめて発注することで単価を下げる

物流コストの削減

送料は利益を圧迫する大きな要素です。以下のような工夫で削減できます:

  • 複数配送業者の料金比較と契約見直し
  • 送料無料ラインを設定し、客単価を引き上げる(例:5,000円以上で送料無料)
  • 商品サイズ・重量の見直しによる送料区分の最適化
  • まとめ買い促進により、1注文あたりの送料比率を下げる

私が支援したある店舗さまでは、送料無料ラインを3,000円→5,000円に変更したことで、客単価が1.3倍になり、送料負担率が改善しました。

支援事例:利益構造の見直しで持続的成長を実現

ここでは、実際に私が支援した店舗さまの改善事例をご紹介します。

※本事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件を変更しています。

事例:健康食品を扱う楽天店舗

改善前の状況

  • 月商:約400万円
  • 広告費:約60万円(対売上比15%)
  • 主力商品のCVR:1.2%
  • 粗利率:35%
  • 営業利益率:約3%

売上は安定しているものの、広告費が高く利益が残らない状態でした。

判断と施策の過程

初期分析(2021年8月):

RMSのデータを分析したところ、以下の問題が見えてきました:

  • 主力商品AのCVR:1.2%(店舗平均1.8%より低い)
  • 広告費の70%を商品Aに投下
  • 商品Aのページは情報量が多いが、訴求がわかりにくい

判断のプロセス:

当初、私たちは「広告費を減らせば利益率が改善する」と単純に考えていました。しかし、広告費を削減するだけでは売上も減少し、結果的に利益額が減る可能性がありました。

そこで、「CVRを改善してから広告を最適化する」という順序で進めることにしました。

実施した施策

① 商品ページの改善(2021年9月〜10月)

  • メイン画像を商品単体から使用シーン画像に変更
  • ベネフィット訴求を強化(「○○成分配合」→「毎朝スッキリをサポート」)
  • よくある質問(FAQ)を追加し、不安を解消

結果(改善後2週間):

  • 主力商品AのCVR:1.2% → 1.5%(+0.3ポイント)

期待していたほどの改善ではありませんでしたが、方向性は間違っていないと判断し、さらに改善を続けました。

追加改善(2021年11月):

  • レビュー獲得キャンペーンを実施(レビュー数:15件 → 45件)
  • 商品説明の構成を見直し、読みやすさを改善

結果(累計):

  • 主力商品AのCVR:1.2% → 1.8%(+0.6ポイント)

ようやく店舗平均レベルまで改善できました。

② 広告配分の最適化(2021年12月)

CVR改善後、次に広告配分を見直しました。

  • 商品別ROASを算出し、効率の悪い商品の広告を段階的に削減
  • CVR改善後の商品Aに広告予算を集中

③ 客単価向上施策(2022年1月〜)

  • 定期購入の訴求強化
  • まとめ買い割引の導入(2個で5%OFF、3個で10%OFF)

改善後の結果(施策開始から6ヶ月後)

  • 主力商品のCVR:1.2% → 1.8%(+0.6ポイント)
  • 広告費:60万円 → 50万円(対売上比12.5%)
  • 客単価:約1.2倍に向上
  • 営業利益率:約3% → 約6.5%

重要な学び:

改善は段階的で、すぐに劇的な効果は出ませんでした。CVR改善だけで3ヶ月、広告最適化で2ヶ月、客単価向上で1ヶ月と、合計6ヶ月かかりました。

また、CVRの改善幅も当初期待していた「2倍」には届かず、1.5倍程度にとどまりました。それでも、地道な改善の積み重ねで利益率を2倍以上に改善できました。

改善のポイント

この事例で重要だったのは、以下の3点です:

  1. 順序を間違えない: 広告削減より先にCVR改善
  2. 小さな改善を積み重ねる: 一度で劇的に変わることは稀
  3. 効果測定を継続: 2週間ごとにデータを確認し、方向性を調整

短期的には売上が横ばいになる時期もありましたが、利益率が改善したことで、次の成長への投資余力が生まれました。

まとめと次のアクション:利益構造の見直しが持続的成長の第一歩

この記事では、楽天市場で利益が残らない理由と、改善のための具体的な対策を解説しました。

重要ポイントの再確認

  • 楽天の手数料だけでなく、広告費・送料・ポイント原資などの”見えないコスト”が利益を圧迫している
  • 売上拡大だけを追うと、変動費も増加し利益率が下がる
  • CVR改善により広告効率を高めることが、利益率向上の鍵
  • 商品別・施策別のROAS・ROIを計測し、データに基づいた改善を行う
  • 仕入れ・物流コストの見直しも利益改善に直結する

利益改善の現実と限界

私が15年以上のEC運営経験で確信しているのは、利益構造の改善は地道で時間がかかるが、最も確実な成長戦略だということです。

ただし、以下の点は理解しておく必要があります:

  • すぐに劇的な効果が出るわけではなく、数ヶ月単位での改善が必要
  • 商品力や価格競争力が不足している場合は、ページ改善だけでは限界がある
  • 改善の過程で一時的に売上が停滞することもある
  • 失敗もあるが、そこから学び調整することが成長につながる

それでも、費用構造を見直し、CVRを改善し、利益率を3〜8ポイント改善できれば、次の成長への投資余力が生まれます。

今日から始められるアクション

まずは以下の3ステップから取り組んでみてください:

  1. 現状把握: 商品別のCVR・広告費・粗利率を一覧化する
  2. 優先順位付け: アクセスは多いがCVRが低い商品を特定する
  3. ページ改善: 1商品だけでも、画像と訴求を見直してテストする

小さな改善でも、積み重ねることで大きな成果につながります。

利益構造の見直しが持続的成長を実現する

楽天市場で長期的に成長するためには、売上規模だけでなく、利益率を重視した運営が不可欠です。

利益が残る構造を作ることで、次の商品開発や顧客サービス向上への投資が可能になり、さらなる成長につながります。

RPP広告の効率的な運用方法については「楽天RPP広告の基本と活用法|仕組み・設定手順・運用のコツまで徹底解説」、モール全体の利益改善戦略については「楽天出店の利益率は平均10%?赤字店舗から脱却し、利益率を25%に改善する5ステップ」で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。


2025年3月更新

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Illustration by Storyset

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