はじめに:「手数料が浮く」という皮算用は捨ててください
「楽天の手数料が高いから、自社ECサイトを作って利益率を上げたい」
私たちのもとに相談に来られるモール出店者の多くが、こう口を揃えます。
15年以上EC業界にいる私から、最初に厳しい現実をお伝えします。
「手数料が浮く分を、集客コスト(広告費)が上回る」のが、自社ECの初期フェーズの真実です。
楽天やヤフーショッピングは、高い出店料の代わりに「圧倒的な集客力」を提供してくれています。自社ECサイト(本店)を作るということは、その恩恵を捨て、砂漠の真ん中にポツンと店を出すようなものです。
では、自社ECはやるべきではないのか?
いいえ、絶対にやるべきです。ただし、「脱モール」を焦るのではなく、「モールの集客力」と「自社サイトの利益率」を両立させる戦略が必要です。
今回は、2026年の市場環境を踏まえ、モール店長が自社EC立ち上げで失敗しないための、泥臭くも確実な7ステップを解説します。
1. なぜ今、モール店長が自社ECを持つべきなのか?
2026年現在、モールだけに依存するリスクは年々高まっています。
- プラットフォームの規約変更: 手数料の値上げや検索ロジックの変更に、店の命運が左右される。
- 顧客リストの不在: 「楽天の顧客」であって「あなたの店の顧客」ではないため、直接のDMやLINE配信が制限される。
- 価格競争の激化: 型番商品は、1円単位の価格競争に巻き込まれ続ける。
自社ECサイトを持つ最大のメリットは、「顧客リストを資産化できること」です。
一度購入してくれたお客様に、LINEやメルマガで直接アプローチし、リピーターになってもらう。この「資産の積み上げ」こそが、自社ECの真価です。
※本記事に掲載している事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件などを変更しております。
2. 自社EC立ち上げの「生存戦略」7ステップ
モール運営の経験があるからこそ陥りやすい罠を回避しながら、着実に進めるステップをご紹介します。
ステップ①:コンセプトは「モールとの差別化」
「モールと同じ商品を、同じ価格で売る」
これでは誰も自社サイトで買いません。ポイントがつく楽天で買います。
自社EC独自の「買う理由」が必要です。
- 本店限定のセット商品(例:お試しセット、定期購入)
- 本店だけの会員ランク制度
- LINE登録ですぐ使えるクーポン
最初は「リピーター様専用サイト」という位置づけでも構いません。モールの同梱物にチラシを入れ、「本店なら次回使えるクーポンがあります」と誘導する動線から考えましょう。
ステップ②:ECカート選定(2026年の最適解)
選択肢は主に3つですが、事業規模と目的で明確に分かれます。
- Shopify(ショッピファイ):【推奨】
- 対象: 月商100万以上を目指す、リピート施策を強化したい店舗。
- 理由: アプリでの機能拡張が最強。LINE連携や定期購入の実装が容易。2026年のスタンダードです。
- futureshop / makeShop:
- 対象: 日本独自の商習慣(ポイント機能や細かい会員ランク)を重視する、中〜大規模店舗。
- 理由: サポートが手厚く、国産カートならではの安心感がある。
- BASE / STORES:
- 対象: まずはコストをかけずにテスト販売したい店舗。
- 理由: 固定費が安いが、集客機能や拡張性には限界がある。
「とりあえず無料のBASEで」と始めると、後でデータ移行が大変になります。本気で事業の柱にするなら、最初からShopifyかfutureshopを推奨します。
【関連コラム】 Shopify・BASE・STORES徹底比較【2026年最新】ECカートの選び方とおすすめ
ステップ③:決済方法は「Amazon Pay」が必須
自社ECの最大の離脱ポイントは「会員登録の入力」です。
モール店長は忘れがちですが、お客様は「知らない店に住所やクレカ情報を入れる」のを極端に嫌がります。
これを解決するのが「Amazon Pay」や「楽天ペイ」です。
いつものIDでログインするだけで、住所もカード情報も自動入力される。この機能があるだけで、新規客の転換率(CVR)は2倍近く変わります。導入コストをケチってはいけません。
ステップ④:サイト構築は「スマホファースト」で
PCで作業していると、ついPCのデザインにこだわってしまいます。
しかし、自社ECのアクセスの8割はスマホです。
- 親指で押しやすいボタン配置か?
- ページの読み込み速度は遅くないか?
- LINE公式アカウントへの登録ボタンは目立つか?
テンプレートを選ぶ際は、必ずスマホでの操作性を最優先してください。
【関連コラム】 ECサイトのデザイン改善3つのポイント|素人でもできる売れるサイトの作り方
また、商品写真についても同様です。高価な一眼レフがなくても、今はスマホで十分きれいな写真が撮れます。「きれいさ」よりも「情報の網羅性(裏側、断面、サイズ感)」を意識しましょう。
【関連コラム】 商品写真の撮影はスマホアプリでOK!ECサイトでプロ並みに見せる無料ツール5選
ステップ⑤:法務・規約関係の整備
「特定商取引法に基づく表記」「プライバシーポリシー」は必須です。
これらは法律で決まっているだけでなく、お客様に安心感を与えるための「約束事」でもあります。
また、昨今は物流コストの上昇により「送料無料ライン」の設定がシビアになっています。
「〇〇円以上で送料無料」というルールを、利益が出るライン(例:3,980円ではなく5,500円にするなど)で慎重に設計しましょう。自社ECなら、モールのルールに縛られず自由に設定できます。
ステップ⑥:【最重要】「集客」の準備(モールを活用せよ)
ここが最大の難関です。広告費をかけずに集客するなら、「モールの発送荷物」を最大限活用しましょう。
- 同梱チラシ: 「本店LINE登録で500円OFF」のQRコードを大きく載せる。※
- サンクスメール: (モールの規約範囲内で)ブランド名での検索を促す。
- SNS: モールで購入したお客様がInstagramに投稿してくれるよう、「タグ付けキャンペーン」を行う。
「モールで新規獲得」→「同梱物で本店へ誘導」→「本店でリピート」。このサイクルを作ることが、最も効率的な勝ちパターンです。
※楽天などは外部誘導について厳しい規約があります。しっかりと規約をチェックし、違反しない誘導を心がけましょう。
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ステップ⑦:テスト注文と公開
決済、メールの自動返信、配送伝票の出力。これらがスムーズに流れるか、何度もテストしてください。特に「在庫連動」は要注意です。モールと本店で在庫を共有する場合、「ネクストエンジン」や「クロスモール」などの一元管理システムの設定ミスで、売り越し(欠品販売)が起きないよう入念にチェックしましょう。
よくある質問:Q&A
Q. 自社ECの売上が立つまで、どれくらいかかりますか?
A. 広告なしなら、早くて半年〜1年です。
最初は「1日1個売れたら奇跡」だと思ってください。焦って広告費を投下するより、まずは同梱チラシからの流入で「リピーターの受け皿」として育てるのが堅実です。
Q. モールはやめるべきですか?
A. 絶対にやめないでください。
新規客を「連れてくる力」はモールが最強です。モールは「広告宣伝費」と割り切り、自社ECは「利益回収装置」と位置づける。この「ハイブリッド運営」こそが、中小ECの最強の生存戦略です。
まとめ:自社ECは「農耕」である
モールの運営が「狩猟(検索した人を捕まえる)」だとすれば、自社ECの運営は「農耕(種をまき、育てて収穫する)」です。
時間はかかりますが、育った顧客リストは、誰にも奪われないあなたの資産になります。
「Shopifyのアカウントは作ったけど、何から手をつけていいか分からない」
「モールとの在庫連携はどうすればいい?」
そんな悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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