1. なぜ「どっちがいい?」という問いが間違いなのか
「楽天か自社ECか、どちらを選ぶべき?」
この質問は、EC業界で最もよく聞かれる相談の一つです。15年以上、ネット通販事業に携わってきた経験から言えば、この問い自体が実は成立していません。
なぜなら、両者は「役割」が根本的に異なるからです。
- 楽天市場: 新規顧客と出会うための「広場(集客装置)」
- 自社サイト: 利益を確保し、ファンを育てる「家(収益装置)」
片方を選ぶのではなく、両方のメリットを使い分ける「ハイブリッド戦略」こそが、中小事業者が生き残るための唯一の現実解です。
この記事では、モール依存から脱却し、利益率を劇的に改善するための全戦略を、以下の詳細記事と合わせて徹底解説します。
2. 楽天と自社サイトの決定的な違い
まずは、それぞれの特徴を「家」に例えて整理しましょう。
楽天市場=「好立地の高級賃貸マンション」
何もしなくても毎日数十万人の人通りがあり、初日から売上が見込めます。しかし、家賃(手数料)が高く、内装(ブランディング)の自由もききません。そして何より、大家さん(モール)の都合で退去を命じられるリスクがあります。
▼利益を削る「価格競争」の出口戦略
[詳細記事] 「最安値」で戦うのはもう限界…!価格競争に疲弊したショップが生き残る唯一の方法とは?
1円単位の値下げ競争に疲れていませんか?価格以外の「価値」でお客様に選ばれ、適正利益を確保するための具体的な戦略を、実例を交えて解説します。
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[詳細記事] 楽天市場・Yahoo!ショッピングで「売っても利益が出ない」本当の理由
自社サイト=「郊外の持ち家」
手数料がかからず、利益率は高いですが、建てただけでは誰も来ません。自分で道を整備し、人を呼ばなければなりません。しかし、一度集まった顧客データは、誰にも奪われない「資産」になります。
▼ 「資産」になるEC運営の詳細はこちら
[詳細記事] 「楽天市場=賃貸」vs「自社サイト=持ち家」|資産になるEC運営と顧客リストの重要性
【比較表】一目でわかる違い
| 項目 | 楽天市場 | 自社サイト |
| 集客力 | ◎ (非常に高い) | △ (自力で構築必須) |
| 利益率 | △ (手数料で圧迫) | ◎ (手数料がない) |
| 顧客資産 | × (モールのもの) | ◎ (自社の資産) |
| 自由度 | × (規約に縛られる) | ◎ (ほぼ制約なし) |
3. なぜ「一本化」ではなく「併用」なのか
「手数料が高いから楽天を辞めよう」という判断は危険です。
実際に、月商400万円を楽天で達成した後に退店し、自社サイトに一本化したEさんは、集客が途絶えて売上が半減してしまいました。
正解は「役割分担」です。
- 楽天で出会う: 利益率が低くても、広告費と割り切って新規客を獲得する。
- 自社サイトで育てる: 2回目以降の購入を自社サイトに誘導し、高利益率で回収する。
▼ 失敗しない「3カ年移行ロードマップ」
[詳細記事] 脱・モール依存のロードマップ!目指すべき「売上構成比」と段階的なShopify移行戦略
▼ 広告費の依存から脱却する方法
[詳細記事]楽天RPP広告のROASが合わない!広告費を削減して売上を維持する「ハイブリッド集客」のススメ
「広告を止めると売上が止まる」という恐怖から抜け出すには?広告費率を下げながら売上を維持する、モールと自社サイトの「ハイブリッド集客」の手順と実例を公開します。
4. 自社サイトの「集客」と「システム」の壁を突破する
「でも、自社サイトは集客が難しいし、管理も大変…」
その不安を解消する具体的な方法があります。
集客:モールとは違う「農耕型」のアプローチ
自社サイトにはRPP広告のような即効性のある集客はありません。しかし、SNS(Instagram)やコンテンツSEO(ブログ)、そして「モールからの指名検索」を活用することで、広告費をかけずにファンを集めることができます。
▼ 「集客できない」の誤解を解く
[詳細記事] 「自社サイトは集客できない」は嘘?モールとShopifyの集客構造の違いを完全解説
システム:なぜShopify一択なのか
拡張性、デザインの自由度、そして楽天との連携のスムーズさを考えると、カートシステムはShopify(ショッピファイ)が最適です。
特に、カゴ落ちを防ぐ「Shop Pay」の威力は、自社サイトの弱点を完全に補ってくれます。
▼ カート選びで失敗しない条件
[詳細記事] なぜECコンサルの私は「Shopify」を勧めるのか?楽天出店者が選ぶべきカートシステムの条件
在庫管理:手間を増やさない「一元管理」
「2店舗も管理できない!」という悩みは、ネクストエンジンなどの在庫連携システムで解決できます。これにより、在庫調整や受注処理が自動化され、手間を増やさずに売口(うりぐち)だけを倍増させることが可能です。
▼ 店長・受注担当者は必読
[詳細記事] 【店長必見】楽天とShopifyの「在庫・受注」を一元管理!手間を増やさずに多店舗展開する方法
5. 【最重要】規約を守ってお客様を誘導する方法
ここで最も注意すべきは、楽天から自社サイトへの誘導方法です。
「次回は本店がお得!」といったチラシを入れるのは、楽天の規約違反(バイパス行為)となります。
しかし、「会社情報の開示(URL併記)」や「ブランドブックによるファン化」は認められています。無理な誘導をせず、お客様が自然と「指名検索」したくなる仕掛けを作りましょう。
▼ アカウント停止を避ける安全な誘導術
[詳細記事] 【2025最新】「規約違反」におびえない同梱物戦略|楽天市場・Yahoo!から安全に「自社サイト」を知ってもらう方法
6. よくある不安と対策(Q&A)
最後に、コンサル現場でよく聞かれる質問にお答えします。
Q1. 楽天の売上が減ってしまうのが心配です…
A. 役割分担を明確にすれば、共食いは起きにくいです。
楽天と自社サイトのユーザー層は意外と被りません。楽天ユーザーはポイント重視、自社サイトユーザーはブランド重視です。両方やることで、取りこぼしていた層にアプローチできます。
Q2. どのタイミングで併用を始めるべき?
A. 目安は「月商100万円」を超えたあたりです。
この規模になると、手数料の負担額が大きくなり、利益率改善のインパクトが大きくなるからです。また、ある程度の顧客リスト(発送実績)がないと、自社サイトへの誘導も効果が出ません。
Q3. 発送作業の負担はどうなりますか?
A. 発送代行(委託)の検討をおすすめします。
Shopifyと連携できる物流倉庫を使えば、受注から発送まで完全自動化も可能です。空いた時間で、「どうやって売るか」を考えるマーケティング業務に集中しましょう。
7. まとめ:今日からできるアクション
楽天と自社サイトの併用は、単なる「多店舗展開」ではありません。
「フロー型(使い捨て)」のビジネスから、「ストック型(資産積み上げ)」のビジネスへと転換する大きな決断です。
- 利益構造を把握する: 楽天でいくら手数料を払っているか計算する。
- Shopifyを触ってみる: 無料体験で管理画面の使いやすさを知る。
- 同梱物を見直す: 規約の範囲内で、自社の存在を知ってもらう工夫をする。
私たちSBマーケティングデザインは、あなたの店舗に合った「ハイブリッド戦略」の設計から実装までをサポートしています。
「自分の店の場合、どうシミュレーションすればいい?」と思われた方は、ぜひ無料相談をご利用ください。現場で培った知見を、あなたの事業成長のために活かしたいと考えています。