楽天市場・Yahoo!ショッピングで「売っても利益が出ない」本当の理由|手数料地獄からの脱出シミュレーション

なぜ、月商1,000万円を超えても楽になれないのか

「売上は過去最高を更新しました。でも、口座に残高が増えていないんです」

これは、私がコンサルティングの現場で最も頻繁に耳にする、切実な悩みです。

私はこれまで15年以上、自らECサイト運営の現場に立ち、現在はその経験を活かして多くのショップ様をご支援しています。その経験から断言できるのは、「モールの売上拡大=利益の増大」という図式は、ある一定ラインで破綻するということです。

それはあなたの経営努力が足りないからではありません。ECモールというプラットフォームが持つ「構造的な利益の限界」に、気づかぬうちに到達してしまっているからです。

本記事では、かつて私自身も運営者として苦しんだこの「利益構造の罠」を数値で可視化し、そこから脱却するための現実的な選択肢(自社サイト併用)について解説します。

※本記事に掲載している事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件などを変更しております。

なぜあなたのショップはお金が残らないのか?(コスト構造の解剖)

多くのショップオーナー様は、PL(損益計算書)上の「販売手数料」だけを見て対策を練ろうとしますが、それでは不十分です。

目に見える手数料と「隠れたコスト」の総量

楽天市場やYahoo!ショッピングなどのモール運営には、明細に大きく載るロイヤリティ以外に、利益を確実に削り取る「隠れたコスト」が存在します。

一般的なモデルケース(月商300〜500万円規模)で試算してみましょう。

  1. 販売手数料(ロイヤリティ): 2.0%〜7.0%(※契約プラン・ジャンルにより変動)
  2. 決済手数料: 約3.0%〜4.0%
  3. ポイント原資負担: 最低1.0%〜(キャンペーン時は10%近くになることも)
  4. 広告費(RPP等): 売上の10%〜20%(※ここが最大の圧迫要因)
  5. 送料無料ラインの負担: 平均単価に対し5%〜10%相当の配送コスト増

これらを合算すると、商品を仕入れる前の段階で、売上の25%〜30%近くがコストとして確定してしまいます。

粗利率が40%の商品を扱っていても、手元に残る営業利益は10%程度。ここから人件費や固定費を引けば、利益率は数%(あるいはトントン)にしかなりません。これが「売ってもお金が残らない」正体です。

【私自身の失敗談】「広告で売上を作れば利益は後からついてくる」という幻想

恥ずかしながら、私も運営者時代に大きな失敗をしました。「まずはランキングを取るために広告を投下しよう。リピーターがつけば回収できる」と考え、利益度外視でRPP広告(当時はCPC広告)を運用したのです。

結果はどうだったか? 売上は2倍になりました。しかし、モールの特性上、「新規客は増えたが、彼らは店ではなく『モールの安売り』に惹かれて来ただけ」でした。広告を止めると売上は即座に半減。結局、広告費を払い続ける「自転車操業」に陥り、半年間で数百万の赤字を出して撤退戦を強いられました。

この経験から学んだのは、「モールの集客構造に依存したままでは、LTV(顧客生涯価値)は積み上がらない」という冷徹な事実です。

構造的限界から脱却する「ハイブリッド型」戦略とは?

では、どうすれば良いのか。すべてのモール店舗を閉めるべきかというと、それは現実的ではありません。モールには圧倒的な「集客力」があるからです。

正解は、モールと自社サイト(Shopifyなど)の役割を明確に分ける「ハイブリッド戦略」です。

モールは「広告塔」、自社サイトは「収益の受け皿」

  • モール(楽天市場・Yahoo!):
    利益はトントンで構いません。ここでは「新規顧客との接点」を作ります。広告費や手数料は、将来の優良顧客を獲得するための「採用コスト」と割り切ります。
  • 自社サイト(Shopify):
    モールで認知してくれた顧客を、ブランドのファンとして定着させる場所です。

Shopifyを併用することで生まれる「利益の差」

実際に私が支援したクライアント様(アパレル雑貨・原価率50%)の事例で、モールとShopify(自社サイト)の収支構造を比較してみましょう。

ここでは現実的に、商品の仕入れ原価や送料、そしてShopify側でも発生するシステム維持費やCRMツール費(LINE配信費用など)を含めて試算します。

  • 【A:モールの利益構造】(広告依存型)
    • 売上:100万円
    • 原価:50万円(50%)
    • 送料・資材:10万円(10%)
    • モール手数料・ポイント:12万円(12%)
    • 広告費(RPP等):18万円(18%)
    • 手元に残る利益:10万円(利益率10%)
    • ※ここから人件費や家賃を引くと、営業利益は数%〜トントンになります。
  • 【B:Shopifyの利益構造】(リピーター主体型)
    • 売上:100万円
    • 原価:50万円(50%)
    • 送料・資材:10万円(10%)
    • 決済手数料・システム費:4万円(4%)
    • 販促費(LINE・メルマガ・リタゲ広告):6万円(6%)
    • 手元に残る利益:30万円(利益率30%)

いかがでしょうか。 Shopifyであっても、アプリ費用やLINE配信ツール、離脱客へのリターゲティング広告などで一定のコスト(上記では6%)は発生します。完全に0円にはなりません。

しかし、モールの「高騰し続ける新規獲得広告(18%)」と比較すると、その差は歴然です。 同じ売上100万円でも、手元に残る現金(キャッシュ)はモールが10万円に対し、Shopifyは30万円。実に3倍の差が生まれます。

この「利益率の高い売上」の比率を少しずつ増やしていくことこそが、ハイブリッド戦略の肝なのです。

まとめと次のステップ

今のままモールの売上だけを追いかけても、構造的な限界により利益率は改善しません。

「モールで集め、自社サイトで利益を出す」。この導線を設計することこそが、15年以上の経験から導き出した、中小ショップが生き残るための最適解です。

次回は、この戦略を実行する上で多くのショップが恐れる「価格競争」について。最安値競争から抜け出し、適正価格でも選ばれるための具体的な手法をお話しします。

▼ この記事は「ハイブリッド戦略」シリーズの一部です

今回はモールの隠れた手数料の実態について深掘り解説しましたが、これは利益最大化戦略の一部に過ぎません。 「点」の施策だけでなく、ビジネス全体の「構造」を変えて利益を最大化する方法を、以下の総集編記事で体系的にまとめています。

👉 【2025年版】楽天と自社サイトはどっちがいい?併用で利益を最大化する「ハイブリッド戦略」の全貌


ECモールも自社サイトもお任せください。経験豊富なコンサルタントが売上&利益率改善に導きます。まずはどんなこともお気軽にお問い合わせください。

 無料相談はこちら


Illustration by Storyset

>

「売上が伸びない」「人手が足りない」「自社ECを成長させたい」──そんな悩みを抱える中小EC事業者様に向けて、実務経験15年以上のプロが現場目線で本質的な改善を支援します。 制作や広告にとどまらず、戦略設計から実行まで一貫して伴走。初期費用ゼロ・月5万円から導入でき、小規模でも無理なく始められます。 楽天・Yahoo!・自社ECを問わず、「変えたい」と思ったその時が第一歩。 まずは無料でご相談ください。