楽天RPP広告のROASが合わない!広告費を削減して売上を維持する「ハイブリッド集客」のススメ

広告は「麻薬」。一度打つと、止められなくなる恐怖

「来月の広告予算、少し削ってみませんか?」

私がコンサルティングの現場でこう提案すると、多くの店長様は一瞬、顔を青ざめさせます。「そんなことをしたら、売上が激減してランキングも落ちてしまいます!」と。

その恐怖心、私にも痛いほど分かります。

私自身、過去に運営していた店舗で、月商を維持するためだけに赤字ギリギリまで広告費(当時はCPC広告)を突っ込み続けた経験があるからです。

売上の通知音は鳴り止まないのに、利益計算をすると手元には何も残っていない。しかし、広告を止めればその売上すら消えてしまう…。まさに「広告という麻薬」に依存している状態でした。

本記事では、この「広告を出さないと売れない」という地獄のランニングマシンから降りるための、現実的かつ段階的な手順(ハイブリッド集客)について解説します。

※本記事に掲載している事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件などを変更しております。

その広告費、本当に利益を生んでいますか?(CPAの高騰)

モールの広告は「入札競争」により必ず高騰する

楽天市場のRPP広告やYahoo!ショッピングのアイテムマッチは、基本的にクリック課金型(CPC)です。この仕組みには、運営者が抗えない構造的な欠陥があります。

それは、「競合が増えれば増えるほど、クリック単価(CPC)は青天井に上がる」という点です。

10年前は1クリック20円で集客できたキーワードが、今では50円、100円になっていることも珍しくありません。

ここで「キーワード選定を工夫してROAS(広告費用対効果)を改善しましょう」という小手先のテクニックを語るつもりはありません。

なぜなら、モール内での集客は結局のところパイの奪い合いであり、どれだけチューニングしても、CPA(顧客獲得単価)の上昇トレンドには逆らえない限界があるからです。

新規獲得コストを「リピート」で回収できないジレンマ

最大の問題は、広告費が高いことではありません。「高い広告費を払って獲得した顧客が、2回目に戻ってこないこと」です。

モールのお客様は「楽天で買った」「Yahooで買った」という意識が強く、「あなたのお店」を覚えていません。そのため、同じお客様に2回買ってもらうために、また広告費を払って集客しなければならない。

この「焼き畑農業」のような集客構造こそが、利益を圧迫する真犯人です。

広告費を削減し、利益を残す「ハイブリッド集客」戦略

広告を止めれば売上は落ちます。しかし、広告の「役割」を変えることはできます。

それが、モールと自社サイト(Shopify)を組み合わせたハイブリッド集客です。

モール広告は「投資」、自社サイトは「回収」

考え方を以下のように180度転換してください。

  • 今まで: モール広告で売上も利益も出そうとする(無理がある)。
  • これから: モール広告は「新規顧客リストを買うための投資」と割り切る。利益はShopify(自社サイト)のリピート購入で回収する。

モールという巨大な「人通り」がある場所で、多少コストがかかっても新規客を獲得する。そして、そのお客様をLINEやメルマガを通じて「広告費のかからないShopify」へ誘導し、2回目、3回目の購入をしていただく。

この循環(LTVモデル)が作れれば、初回の広告費が高くても、トータルでは大きな利益が残ります。

【実例】広告費率を20%→12%へ圧縮した現実的なステップ

では、具体的にどうやって移行するのか。私がご支援した健康食品店舗(月商800万円規模)の事例を元に、そのプロセスを公開します。

このクライアント様は、売上の20%(160万円)を毎月広告費に使っており、利益がほぼゼロの状態でした。私たちは以下の3ステップで改善を行いました。

ステップ1:広告の「完全停止」は絶対にしない(失敗回避)

過去に私は、焦って広告を一気にカットし、検索順位まで暴落させて売上を半減させた失敗経験があります。

そのため、このクライアント様には「まずは売上維持。広告費は下げない」という判断をしました。

その代わり、顧客リストの作り方を根本から見直しました。

ここで重要なのは、「モールのガイドラインを正しく理解し、遵守する」ということです。メールマガジンや商品ページ内に外部リンクを貼って誘導することは禁止されています。私たちはルールを守り、健全な運営を行わなければなりません。

では、どこでお客様に「ブランドの魅力」を伝えれば良いのでしょうか?

それが、商品がお手元に届いた瞬間、つまり「同梱物」です。

私たちは、商品ボックスの中に「本店限定のメンテナンスガイド(本店のURL記載あり)」と「店長の手書きサンクスレター」を必ず同梱するようにしました。

直接的なリンク誘導が制限されているモール運営において、このアナログな同梱物こそが、お客様とブランドが直接つながるための大切な「架け橋」になります。

ステップ2:指名検索(ブランド名)の広告を除外する

同梱物を通じて、より深いアフターサポートやブランドの世界観(Shopify本店やLINE)に触れていただいたお客様は、次回から「店名」で指名検索をしてくれるようになります。

(※一度自社のLINE等に登録いただいたお客様に対して、自社の責任で情報発信を行うことは、健全なCRM活動の一環です)

こうした地道な施策で「指名検索」や「直接訪問」が増えてきたころ。モール内の広告キーワードから、「店名」や「独自商品名」での出稿を除外(または入札引き下げ)しました。

すでにファンになってくださったお客様に対して、広告費をかけ続ける必要はありません。ここで初めて、適正な広告費削減が可能になります。

ステップ3:浮いた予算を「CRM」へ回す

浮いた広告費をそのまま利益にするのではなく、一部をShopify用のCRMツール(LINE配信ツールや顧客管理アプリ)に投資しました。

「新商品のお知らせ」や「会員限定セール」をLINEで配信することで、広告費0円で月商の3割を作れるようになりました。

【実績(Before / After)】

  • Before: モール売上800万(広告費160万/比率20%)
  • After(1年後): モール売上600万 + Shopify売上300万 = 合計900万
    • 全体広告費:108万(比率12%)
    • 結果: 売上規模は微増ですが、広告費率が8%下がったことで、月間の営業利益は約70万円アップしました。

まとめと次のステップ

「広告を止める」のではなく、「広告の役割を最適化する」。

この視点を持つだけで、あなたのショップの利益体質は劇的に改善します。

モールは集客装置、Shopifyは収益装置。この2つを回す歯車がかみ合った時、あなたのショップは「広告依存」から抜け出すことができます。

ここまで、クラスター1【現状打破】として、利益構造・価格競争・広告費の問題を見てきました。

次回からは、さらに踏み込んで「なぜ、数あるカートシステムの中でShopifyが最適なのか?」について、資産価値やシステム的な観点から比較・解説していきます。

  • 【次の記事へ】「楽天市場=賃貸」vs「自社サイト=持ち家」|資産になるEC運営と顧客リストの重要性

▼ この記事は「ハイブリッド戦略」シリーズの一部です

今回はモールの広告費削減について深掘り解説しましたが、これは利益最大化戦略の一部に過ぎません。 「点」の施策だけでなく、ビジネス全体の「構造」を変えて利益を最大化する方法を、以下の総集編記事で体系的にまとめています。

👉 【2025年版】楽天と自社サイトはどっちがいい?併用で利益を最大化する「ハイブリッド戦略」の全貌


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