「自社サイトを作ったら、楽天は退店すべきでしょうか?」
「売上の何割くらいを自社サイトで作れば、経営は安定するのでしょうか?」
多くのEC経営者が抱えるこの悩み。正解は「モールは辞めずに、利益の柱を自社サイトへ『徐々に』移す」です。
いきなりモールを辞めるのは、ハシゴを外された状態で空中ブランコをするようなもの。自殺行為です。
目指すべきは、モールの集客力を利用しながら、利益率の高い自社サイトの比率をじわじわと高めていく「黄金比率」への軟着陸です。
この記事では、3年かけて安全に利益体質へ変貌するための具体的なロードマップと、目指すべき数値目標について解説します。
1. 目指すべき「黄金比率」は 50:50
多くのショップの現状は、「モール9:自社1」、あるいは「モール100:自社0」という極端なモール依存状態です。これではアカウント停止のリスクや手数料の変動に経営が振り回されます。
私がコンサルティングの現場で推奨している、中長期的に目指すべき「売上構成比」のゴールは以下の通りです。
| 売上比率 | 役割 | |
| モール (楽天/Amazon) | 50% | 「集客装置」 新規顧客との出会いの場。広告費がかかっても認知を広げる。 |
| 自社サイト (Shopify) | 50% | 「収益装置」 リピーターの受け皿。手数料を抑え、高い利益率を確保する。 |
売上が同じでも、この比率が変わるだけで、手元に残る利益は劇的に変わります。
なぜ50:50なのか?
自社サイトが育っても、モールの「圧倒的な集客力」は捨てがたいからです。
新規客はモールで取り続け、ファンになったお客様が自社サイトで買い続ける。このサイクルが回ると、売上規模を落とさずに利益率だけが向上します。
2. 失敗しない「3カ年ロードマップ」
焦りは禁物です。「来月から自社サイトで売るぞ!」と意気込んでも、お客様はいきなり移動してくれません。
以下のような3段階のステップで、じっくりと「体質改善」を進めましょう。
フェーズ1:準備と認知(1年目)
目標:自社サイト比率 10%
まずは「家(自社サイト)」を建て、お客様にその存在を知ってもらう時期です。
- Shopify構築: モールの商品を移行し、決済環境(Shop Payなど)を整える。
- 同梱物の刷新: 発送する荷物に「ブランドブック」や「お礼状」を同梱し、店名での「指名検索」の種をまく。(※規約を守り、無理な誘導はしない)
- 役割分担: 「初めての方は楽天が便利ですが、公式情報を知りたい方は公式サイトへ」というスタンスで情報を充実させる。
フェーズ2:差別化とファン化(2年目)
目標:自社サイト比率 30%
指名検索で自社サイトに来てくれたお客様に対し、「本店ならではのメリット」を提供して定着を促します。
- 本店限定商品: 「セット商品」や「業務用サイズ」など、モールにはない(価格比較されにくい)商品を置く。
- 会員プログラム: LINE連携などで、購入回数に応じたランク制度や限定コンテンツを提供する。
- CRM強化: モールではできない細やかなメルマガやLINE配信で、リピート購入の動機を作る。
フェーズ3:利益最大化(3年目〜)
目標:自社サイト比率 50%
リピーターの多くが自社サイトで購入するようになり、モールの広告費を抑制できる段階です。
- 広告の最適化: モールのRPP広告は「新規獲得」に集中させ、リピーター向け広告はカットする。
- LTV向上施策: 定期購入(サブスク)の導入や、クロスセルで客単価を上げる。
3. 【事例】利益率3%→12%へ。A社の軌跡
実際にこのロードマップを実践した、食品EC(年商1億円規模)のA社の事例を紹介します。
※本記事に掲載している事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件などを変更しております。
【改善前:モール依存期】
- 売上:1億円(楽天95% / 自社5%)
- 営業利益:300万円(利益率3%)
- 悩み:セール時のポイント負担と広告費で利益が消える。
【3年後:ハイブリッド期】
- 売上:1.1億円(楽天60% / 自社40%)
- 営業利益:1,320万円(利益率12%)
- 変化:売上規模はほぼ変わらないが、自社サイト比率が増えたことで「販売手数料」と「モール広告費」が激減。
何をしたか?
A社が行ったのは、派手な集客ではありません。
「丁寧な梱包と同梱物でファンを作り、自社サイトで定期購入ができるようにした」。これだけです。
お客様にとって「一番買いやすい場所」を自社サイトに用意した結果、自然と比率がシフトしていったのです。
4. 結論:モールは「辞める」ものではなく「使い倒す」もの
「脱・モール依存」とは、モールを敵対視して退店することではありません。
「モールに生殺与奪の権を握られている状態」から脱することです。
自社サイトという「自分の城」が育っていれば、万が一モールの規約変更やアカウントトラブルがあっても、ビジネスは揺るぎません。
今日からできる一歩は、Shopifyでサイトを作ることではありません。
「今のお客様は、なぜ自社サイトではなくモールで買っているのか?」
この問いに向き合い、自社サイトで買うべき「理由(メリット)」を考えることからロードマップは始まります。
▼ この記事は「ハイブリッド戦略」シリーズの一部です
今回は脱モール依存のロードマップについて深掘り解説しましたが、これは利益最大化戦略の一部に過ぎません。 「点」の施策だけでなく、ビジネス全体の「構造」を変えて利益を最大化する方法を、以下の総集編記事で体系的にまとめています。
👉 【2025年版】楽天と自社サイトはどっちがいい?併用で利益を最大化する「ハイブリッド戦略」の全貌
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