ECモール出店経験のある事業者が「そろそろ自社ECも持ちたい」と考えるのは自然な流れです。楽天やYahoo!ショッピングの手数料負担から逃れたい、顧客データを自社で管理したい、ブランドを自由に表現したい。こうした想いは誰もが持ちます。しかし、いざ自社ECカートを選ぼうとすると「Shopify、BASE、STORES…結局どれが自分たちに合ってるの?」という壁にぶつかってしまう。これが、EC事業者のご相談でいちばん多いお悩みなのです。
本記事では、Shopify・BASE・STORESの3つのカートプラットフォームを、料金・機能・向き・不向きといった実務的な観点から比較します。月商の推移にあわせた最適な選択肢も提示していますので、あなたのステップにぴったり合ったカート選びの判断材料がここに揃います。
※本記事に掲載している事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件などを変更しております。
Shopify・BASE・STORES比較の前に押さえたい「自社ECカート選び」の前提
自社ECを持つことのメリットは大きく3つあります。まず、モール手数料を大幅に削減できること。次に、顧客データを完全に自社資産にできること。そして、ブランドの世界観を余すところなく表現できることです。
ただし「どのカートか」を選ぶ前に、より大切なことがあります。それは「自社ECで何を実現したいか」という目的を明確にすることです。リピーター育成を重視したいのか、新規顧客の獲得を最優先にするのか、実店舗との連携を考えているのか。この軸がぶれると、どれだけ機能が豊富なカートを選んでも、運用段階で後悔することになります。
15年以上のEC運営経験のなかで、私たちが見てきた失敗事例のほぼすべてが「目的を決めずにカートを選んでしまった」というケースでした。逆に、事業フェーズと目的を明確にしてから選んだ事業者は、その後の運用がスムーズに進むケースばかりです。
本記事で分かることは、以下の3点です。
- Shopify・BASE・STORESの料金体系、手数料、機能の正確な違い
- 月商規模と事業目的に応じた「あなたにぴったりなカート」
- カート選び後の失敗を防ぐための実践的なチェックリスト
Shopify・BASE・STORESの基本比較【早わかり表】
| 項目 | Shopify | BASE | STORES |
| 初期費用 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 月額費用 | 3,650円〜 | 0円 / 16,500円* | 0円 / 3,300円* |
| 決済手数料 | 3.55%〜 | 3.6% + 40円 / 2.9% | 5.0% / 3.6%* |
| デザイン自由度 | ◎ 高い | △ 限定的 | 〇 テンプレート豊富 |
| 機能拡張性 | ◎ 圧倒的 | 〇 必要な機能は揃う | 〇 必要な機能は揃う |
| 向いている規模 | 月商50万以上 | 月商〜50万 | 月商20万〜100万 |
*注:月額費用、決済手数料は有料プランの場合。BASEグロースプランは16,500円(年払い時)、STORESは2025年3月改定による新プラン適用
Shopifyの特徴と向いている店舗
強み:拡張性と決済手数料
Shopifyは世界175カ国以上で300万以上のストアに選ばれている、グローバルスタンダードなプラットフォームです。最大の強みは、その拡張性の高さにあります。「Shopify App Store」には数千のアプリが揃っており、サブスク販売、予約販売、高度なレビュー機能といった、モールではけっして実現できない施策を自由に構築できます。
デザイン性の面でも、プロが作った洗練されたテンプレートが豊富です。HTML/CSSの知識があれば、カスタマイズの自由度は事実上無限に近い。越境ECを視野に入れるのなら、Shopifyに早期から慣れておくことは戦略的に重要です。
そして、月商が増えるほど威力を発揮するのが決済手数料です。Basicプラン(月額3,650円)でも3.55%と業界内で最安水準。月商100万円を超えるとこの差が利益に直結し、Shopifyの投資対効果が急速に高まります。
弱み:初期ハードル
ただし、BASEやSTORESと比べると初期設定が複雑です。商品登録、決済設定、税率設定など、一つひとつのステップが細かく、直感的ではありません。「今月から売りたい」という急ぎのニーズには向きにくい面があります。また、月額費用が必ず発生するため、テスト段階でのハードルがあります。
向いている店舗像
- ブランドイメージを細部まで演出したい
- 月商50万〜100万円以上を視野に入れている
- リピーター施策やCRM、マーケティングオートメーションを本格的に構築したい
- モール一辺倒から卒業し、自社ECを「利益の柱」にしたいと考えている
実際に、雑貨を扱うお客様がSTORESからShopifyに移行した時、3ヶ月でリピート率が22%から35%に跳ね上がったケースを私たちも目撃しています。アプリを活用したリピーター施策の威力は、相応の規模に達すると劇的です。
BASEの特徴と向いている店舗
強み:ゼロリスクで挑戦できる
BASEの最大の魅力は「初期費用・月額費用ともに0円」という圧倒的な手軽さです。ネットショップの運営が初めてなら、これほど心強い選択肢はありません。「とりあえず自社ECがどんな感じか試してみたい」という段階では、BASEはまさに最適なプラットフォームです。
管理画面も直感的で分かりやすく、商品登録から決済設定まで、ほぼ迷うことなく進められます。無料でここまでの機能を提供するサービスは、正直なところ他にはありません。
弱み:手数料と拡張性の限界
ただし、無料プランの決済手数料は「3.6% + 40円 + サービス利用料3%」と高めです。月商が伸びてくると、この手数料負担が顕著になります。月商50万円を超えるあたりで、グロースプランへのアップグレードを検討する事業者が多いのは、このためです。
また、デザインと機能の拡張性にも限界があります。「どうしてもこういう機能が必要」というニーズが生じた時、BASEではカバーできないケースが少なくありません。
向いている店舗像
- まずは小さく、リスクなく始めたい個人事業主やスタートアップ
- SNS(Instagram、TikTok)での集客が中心で、本格的なSEO対策は不要
- シンプルな商品体系で、複雑な決済フローが不要
- 「売上が出たら、その時にプラン変更を検討する」という柔軟なアプローチを取りたい
STORESの特徴と向いている店舗
強み:バランスの取れた料金体系
STORESは「BASEとShopifyの中間」という立ち位置で、そのバランスの良さが特徴です。フリープランなら月額費用ゼロで始められます。ただ、決済手数料が5.0%と高めなため、月商20万円程度を超えるとベーシックプラン(月額3,300円、決済手数料3.6%)への切り替えを検討する価値が出てきます。
もう一つの強みが、実店舗との連携です。STORESレジ(POS)と統合することで、オンラインとオフラインの在庫、売上をシームレスに管理できます。「カフェを運営しながら、オリジナル商品もオンラインで販売したい」というような、複合型ビジネスにはSTORESが最適です。
テンプレートも豊富で、初心者でも見栄えの良いサイトを短時間で構築できます。この点では、BASEよりも一段上のクオリティを実現しやすい。
弱み:高度なカスタマイズの限界
Shopifyほどの拡張性はありません。「チェックアウトページを完全にカスタマイズしたい」「独自の決済フローを実装したい」といった要望には対応できません。また、越境ECの機能も限定的です。
向いている店舗像
- スモールスタートで、バランスの取れたコスト効率を求めている
- 実店舗も運営しており、オンラインとオフラインの一元管理が必要
- 月商20万〜100万円のレンジで安定的に運営する予定
- デザインのセンスはテンプレートに頼りたい
月商・目的別で見るおすすめECカートの選び方
月商〜30万円:BASEまたはSTORESフリープランが有利
この段階では、月額費用の有無が大きく響きます。BASEのスタンダードプラン(無料)やSTORESのフリープラン(無料)は、この規模に最適です。手数料で比較すると、STORESフリープラン(5.0%)の方がBASE(3.6% + 40円 + 3%)より有利な場合が多いですが、販売数や客単価によって変動します。
実例:アパレル事業者のケース
かつて、インポート雑貨を扱う30代女性事業主が「まずはInstagramで月5〜10万円の売上を目指したい」と相談に来られました。BASEで開設してから3ヶ月で月商15万円に達した時点で、「これから本格化させるならどうする?」という判断を迫られました。この時点でSTORESベーシックプランへの移行を勧めたのは、決済手数料が3.6%に下がるメリットを見込んだからです。
月商30万〜100万円:STORES有料プラン、またはShopifyの検討ライン
この段階が、カート選びで最も判断が分かれるゾーンです。STORESベーシックプラン(月額3,300円、決済手数料3.6%)と、Shopify Basicプラン(月額3,650円、決済手数料3.55%)の月額費用はほぼ同じですが、その先の拡張性が大きく異なります。
月商50万円に達した段階で「リピーター率を高めたい」「顧客データを活用したマーケティングをしたい」という要望が生じた場合、STORESでは対応しきれません。Shopifyであれば、アプリを活用してこうしたニーズを実装できます。
実例:化粧品通販のケース
化粧品を扱う事業者が月商80万円に達した時点で、「クーポン配信や会員リピート施策をもっと細かく制御したい」という相談をいただきました。STORESではこの要望に応えられなかったため、Shopifyへの移行をアドバイスしました。移行後6ヶ月で月商120万円に到達し、利益率もそれまでより7ポイント改善したと報告をいただいています。
月商100万円以上:Shopifyで決済手数料の優位性を活かす
この規模では、月額費用の重要性は相対的に低下します。決済手数料の差がダイレクトに利益に響くため、最安水準のShopifyの優位性が顕著になるのです。
また、月商が大きくなるほど「複雑な在庫管理」「多様なマーケティング施策」「複数事業の統合管理」といったニーズが生じやすくなります。Shopifyのアプリエコシステムがここで真価を発揮します。
「モール + 自社EC」で利益を最大化したいなら、Shopify一択
楽天やYahoo!ショッピングと自社ECの「併立戦略」を検討している場合、私たちの経験では Shopify 一択をお勧めしています。理由は3つあります。
第一に、モール側の営業施策(セール、キャンペーン)の時間軸と、自社EC側の顧客育成サイクルを独立させられるから。第二に、Shopifyのアプリを活用すれば、モールでは絶対にできない「一度も購入していない見込み客へのアプローチ」や「購買パターン分析に基づく提案」が実現できるから。第三に、5年単位で見たときの投資対効果が、圧倒的に高いからです。
実際、食品(仕出しサービス)を扱う事業者がモール一辺倒から「楽天70%、Shopify自社EC30%」の売上構成に移行した結果、手数料負担が35%削減され、その分を商品開発に充てられるようになった例もあります。
ECカート選びで失敗しないためのチェックリスト
無料トライアル期間を最大限活用する
Shopifyなら3日間の無料体験、その後3ヶ月間150円での利用が可能です。この期間に「実際に商品を10個登録してみる」「決済テストを完了させる」「管理画面の操作感を確認する」といった実務的なタスクをこなしておくことで、導入後のギャップを最小化できます。
日本語サポートと問い合わせ手段を確認する
「困った時にすぐに相談できるか」は、運用の安定性を大きく左右します。メール、チャット、電話のいずれで対応してくれるのか、営業時間は何時までか、応答時間はどれくらいか。こうした情報は事前に確認しておくべきです。ただし、この点においては、正直なところBASEやSTORESはShopifyより充実しているケースが多いという事実もあります。
将来的なデータ移行を想定しておく
カート選びは「今」を基準にするのではなく、「2〜3年後のビジネス規模」も視野に入れるべきです。もし将来的に別のカートへの移行を考える場合、商品データ、顧客データ、注文履歴のエクスポート機能がちゃんと備わっているか、確認しておくと安心です。
まとめ|ECカート選びは「将来どう成長したいか」から逆算する
Shopify・BASE・STORESのいずれが「正解」なのではなく、あなたのビジネスステージと成長戦略によって、最適な選択肢は変わるということが、この記事で最もお伝えしたいポイントです。
個人事業主で月商30万円以下なら、BASEやSTORESのフリープランで十分です。そこから事業が伸びて、本格的なマーケティングや顧客管理を考えるなら、Shopifyへのシフトが視野に入ります。モール出店経験がある中小企業であれば、自社ECの立ち上げ時点でShopifyを選ぶことで、後々の手間や費用を削減できるケースも多いのです。
今日からできる3つのアクション:
- 候補を2つに絞ってトライアルを試す:無料期間を活用して、実際に操作してみてください。机上の比較より、100倍の価値があります。
- 自社の2〜3年後の売上予測と利益目標を立てる:それに応じた「総コスト」(月額費用 + 決済手数料)をシミュレーションすれば、選択肢が自ずと絞られます。
- モールとの役割分担を整理する:自社ECはブランド構築と顧客育成、モールは新規集客というように役割を分けると、カート選びの軸も明確になります。
ECカート選びは、自社EC成功への第一歩に過ぎません。本当に大切なのは、そのカートを使って「誰に、何を、どう届けて、どうやって利益を最大化するか」という戦略の部分です。私たちSBマーケティングデザインは、単なるサイト構築ではなく、カート選びから戦略設計、集客まで、ワンストップであなたの自社EC事業に伴走します。
「自分たちの場合、どのカートがいいのか確信が持てない」「具体的な費用対効果をシミュレーションしてほしい」
そんな場合は、お気軽に無料相談へお問い合わせください。15年以上のEC運営経験と、数百社のコンサルティング実績からの提案をさせていただきます。
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