第2回:お客様が「本当に欲しい」を見つける!潜在ニーズ深掘りリサーチ術
前回は、中小規模の楽天市場・ヤフーショッピング出店者が大手と戦うためには、独自の「勝てる戦場」を見つけることが重要であるとお話ししました。では、具体的にどのようにしてその戦場を見つけ、お客様の心に刺さるコンセプトを設計すれば良いのでしょうか?今回は、その具体的な方法について深掘りしていきます。
1. 表面化されていない顧客ニーズを深掘りするリサーチ術
「お客様のニーズを理解する」とはよく言われることですが、多くの場合、ECサイトのアクセス解析や競合サイトの売れ筋商品を見るだけに留まりがちです。しかし、これだけでは大手と同じ土俵での比較に終わり、真に「選ばれる理由」を見つけることは困難です。
中小企業が狙うべきは、まだ誰も気づいていない、あるいは大手が見過ごしている潜在的なニーズです。そのためには、多角的な視点から顧客を深掘りするリサーチが不可欠です。
1.1. 楽天市場・ヤフーショッピング内の「お客様の声」を徹底分析
最も手軽で、かつ有効なのが、モールのレビューやQ&Aです。お客様は商品に対して正直な感想や要望を書き込みます。
- 良いレビューの深掘り:
- どんな点が評価されているのか?
- どのような「感情」が伴っているのか?
- 「リピートしたい」という声の裏に隠された真の価値は何か?
- 悪いレビューからのヒント:
- 何が不満だったのか?
- 改善してほしい点は何か?
- お客様が「本当はこうだったら良かったのに」と感じていることは、新しい商品開発や既存商品の新たな訴求ポイントになり得ます。
- Q&Aで顧客の疑問を把握:
- どんな疑問や不安を持っているのか?
- 商品説明では伝えきれていない、お客様が本当に知りたい情報は何か?
これらの情報を収集し、共通するキーワードや感情を洗い出すことで、お客様の「心の声」が見えてきます。
1.2. SNSで顧客の「生の声」とトレンドをキャッチ
X(旧Twitter)、Instagram、TikTokなど、SNSはお客様のリアルな声やトレンドが溢れている宝庫です。
- ハッシュタグ検索で会話を追う:
- あなたの商品カテゴリに関連するハッシュタグ(例:#キャンプ飯、#時短レシピ、#敏感肌コスメ、#在宅ワーク快適グッズ)で検索します。
- どのような会話がされているか、どんな商品が話題になっているか、ユーザーが何に困っているか、どんなライフスタイルを送っているかを観察しましょう。
- インフルエンサー投稿から「憧れ」を探る:
- あなたのターゲット層に影響力のあるインフルエンサーが、どのような商品を推薦し、どのような言葉で紹介しているかを確認します。
- その背景にある、お客様の「憧れ」や「共感」のポイントを探りましょう。
- ネガティブな発言からニーズを発掘:
- 特定の商品やサービスに対する不満、ストレス、課題などをXなどで検索してみます。そこに、まだ満たされていないニーズがあるかもしれません。(例:「〇〇(既存商品)が使いにくい」「△△(サービス)にこんな機能があればいいのに」といった声)
SNSでのリサーチは、お客様が「何を求めているか」だけでなく、「なぜそれを求めているのか」「それを手に入れることでどうなりたいのか」という深層心理を探る上で非常に有効です。
1.3. 顧客インタビューやアンケートで直接ニーズを聞く
可能であれば、実際に顧客と直接対話する機会を持つことも重要です。既存の優良顧客数名に協力してもらい、インタビュー形式で深掘りします。
- 購入理由: なぜあなたのブランドの商品を選んでくれたのか?
- 使用感: 使用してみて、どのような点が良かったか、期待外れだったか?
- 追加要望: 他にどんな商品やサービスがあれば嬉しいか?
- 情報収集源: 普段、どのような情報をどこから得ているか?
- ライフスタイル: どんなことに悩み、どんな生活を送っているか?
アンケートも有効ですが、自由記述欄を多く設け、定量的なデータだけでなく定性的な意見も収集するように工夫しましょう。直接対話することで、レビューやSNSでは得られない、お客様の表情や声のトーンから「本当のニーズ」を感じ取ることができます。
2. お客様の心に「刺さる」コンセプト設計
リサーチによって顧客の潜在ニーズや「勝てる戦場」のヒントが見えてきたら、次はその情報を元に、お客様の心に深く響く「コンセプト」を設計します。コンセプトは、商品の特徴や機能ではなく、「お客様にとっての価値」を明確に伝えるものです。なお、コンセプト設計についてもっとよく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
2.1. 詳細なターゲット顧客像(ペルソナ)の明確化
リサーチで得た情報を統合し、あたかも実在する一人の顧客であるかのように、詳細なターゲット顧客像(ペルソナ)を作り上げます。
ペルソナの作り方についてはこちらのコラムで解説していますので、合わせてご覧ください。
カテゴリ | 具体的な情報例 |
基本属性 | 氏名、年齢、性別、職業、家族構成、居住地、年収 |
内面 | 性格、価値観、趣味、ライフスタイル |
行動 | 情報収集源(SNS、雑誌、特定のウェブサイトなど) |
課題 | 悩み、不満、ストレス(あなたのブランドの商品が解決できる課題) |
目標 | 目標、願望、理想(あなたのブランドの商品を通じて得たい未来) |
ペルソナを具体的に描くことで、「誰に」「何を」「どう伝えるか」が明確になり、コンセプトがブレることを防げます。
2.2. USP(独自の売り)の抽出と磨き上げ
ペルソナの悩みや願望に対し、あなたのブランドが提供できる「Unique Selling Proposition(USP:独自の売り)」を明確にします。これは、単なる商品の特徴ではなく、「競合には真似できない、お客様にとっての唯一無二の価値」です。
- 機能的価値: 「他社製品より〇〇倍速い」「〇〇の成分が△△倍配合」など、具体的な機能の優位性。
- 情緒的価値: 「使うだけで心が豊かになる」「自信が持てる」「家族との絆が深まる」など、感情に訴えかける価値。
- 自己表現的価値: 「これを身につけることで理想の自分になれる」「センスがいいと思われる」など、自己実現に関わる価値。
特に中小企業は、機能的価値で大手と戦うのは難しいため、情緒的価値や自己表現的価値に焦点を当てることが重要です。例えば、「すっぴん=美」の化粧品は、単なる肌ケア製品ではなく、「化粧に縛られず、ありのままの自分を愛せるようになる」という情緒的・自己表現的価値を提供していたと言えます。
2.3. 「ワンコンセプト・ワンメッセージ」でシンプルに伝える
複雑なコンセプトは、お客様の心には響きません。リサーチとUSPの抽出を通じて得られた核となるメッセージを、シンプルかつ力強い「ワンコンセプト・ワンメッセージ」にまとめ上げます。
- 「肌荒れに悩むあなたへ。自然の恵みで、肌本来の力を引き出すオーガニック化粧品。」
- 「週末は家で本格キャンプ!誰でも簡単、手軽に楽しめるアウトドア調理キット。」
- 「在宅ワークの集中力アップに。姿勢と効率を最適化する、ミニマルデザインの昇降デスク。」
これらのコンセプトは、ターゲットが抱える悩み(肌荒れ、本格キャンプの手間、在宅ワークの集中力)を提示し、それに対する明確な解決策や提供価値を簡潔に示しています。そして、これがそのまま楽天市場やヤフーショッピングの商品タイトル、キャッチコピー、商品説明、広告文の核となります。
さあ、これまでの実践でコンセプトが明確になったら、最終回となる第3回ではそれを実際のサイトに落とし込む方法を解説していきます。次回もぜひご覧ください。