「商品数は増えた。売上もそこそこ上がった。でも、なぜか現場は楽にならないし、手元に利益が残らない」
もし今、あなたがこのような感覚をお持ちなら、それは「全ての商品を平等に愛しすぎている」ことが原因かもしれません。
私は15年以上、ECサイトの運営現場に身を置き、現在はコンサルタントとして多くの店舗様をご支援していますが、かつての私もそうでした。「せっかく仕入れたのだから」「いつか売れるかもしれないから」と、売れない商品にも時間を使い、広告費を垂れ流し続けていました。
しかし、EC運営には残酷な真実があります。それは、「売上の8割は、上位2割の商品で作られている」という法則です。残りの8割の商品にリソースを割くことは、経営的な視点で見れば「緩やかな自殺」に他なりません。
本記事では、私が現場で痛い目を見ながら構築した、商品を「稼ぐ戦力」と「撤退すべき負債」に明確に分けるための「売れ筋育成マップ」の活用法を共有します。
※本記事に掲載している事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件などを変更しております。
なぜ「全商品売り」では限界が来るのか?
現場で起きる「多品目貧乏」のメカニズム
取扱商品数が50、100と増え、300点から500点を超えた頃、多くの店長が陥る罠があります。
それは、「すべての商品ページのクオリティを上げようとする」ことと、「なんとなく全体に広告をかけてしまう」ことです。
これをやるとどうなるか。
私が過去に運営していた店舗での実例です。取扱商品数が500点に達した頃、現場には歪みが出始めました。
商品ページのメンテナンスが追いつかず、倉庫には「いつか売れるだろう」と放置された在庫が積み上がり、パートさんは日々の出荷作業だけで手一杯。
しかし、データを紐解いて愕然としました。「利益を出しているのは、たった2割の商品だけだった」のです。残りの商品は、保管コストと人件費を食いつぶすだけの存在になりかけていました。
リソース(時間・人・カネ)は有限です。
「見えないムダ」を排除し、本当に利益を生む商品だけにエネルギーを注ぐ。そのための判断基準が「売れ筋育成マップ」です。
※本記事に掲載している事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件などを変更しております。
売れ筋育成マップとは?商品群を4象限で分類する考え方
このマップは、商品を単に「売上」だけで判断しません。「成長性(未来の可能性)」や「利益率」を掛け合わせて、4つのボックス(象限)に分類します。
▼EC現場で使える4象限マトリクス
縦軸に「売上高(またはアクセス数)」、横軸に「転換率(CVR)」や「粗利率」を取ります。
| 分類 | 特徴(売上 × 効率) | 現場での呼び名 | 取るべき戦略 |
| ① 主力商品 | 売上:高 × 効率:高 | エース | 在庫切れ絶対阻止、広告の最大化、レビュー施策 |
| ② 安定商品 | 売上:高 × 効率:低 | 労働集約品 | 粗利改善(値上げ検討)、オペレーション効率化 |
| ③ 期待商品 | 売上:低 × 効率:高 | ダイヤの原石 | 広告・露出の集中投下、ページ改善(最優先) |
| ④ 整理対象 | 売上:低 × 効率:低 | 不良在庫 | 損切り(セール処分)、取扱い終了、ページ削除 |
多くの店舗様が失敗するのは、「④ 整理対象」に時間を使いすぎていること、そして「③ 期待商品」を見逃していることです。
失敗から学んだ「データ分析」の落とし穴
商品を分類する際、データの見方を間違えると判断を誤ります。ここで、私の「個人的な失敗」を共有させてください。
「売れている=良い商品」とは限らない
かつて私は、月間100個売れるある生活雑貨を「Aランク商品(主力)」と判断し、ランキング上位をキープするためにRPP広告を毎月10万円以上かけていました。
毎日注文が入り、出荷作業に追われていたので「儲かっている」と錯覚していました。
しかし、あるときPL(損益計算書)を商品単体で出してみて青ざめました。
競合との価格競争で薄利になっていた上に、「広告費(CPA)」と「モール手数料」、「送料」を差し引くと、手元に残る利益はわずか数十円…いや、梱包資材代や人件費を含めれば完全にマイナスだったのです。
「一生懸命梱包して発送すればするほど、実は赤字が膨らんでいた」
この「見えない出血」に気づいた時の恐怖は、今でも忘れられません。
この経験から、私は商品を分類する際、必ず以下の指標を見るようになりました。
- 「売上高」ではなく「粗利総額」を見る
- 「アクセス数」と「転換率(CVR)」のバランスを見る
“化ける商品(ダイヤの原石)”を見極める5つのシグナル
育成マップの中で、コンサルタントとして最も重視するのが「③ 期待商品(ダイヤの原石)」の発見です。これこそが、次の収益の柱になるからです。
RMSやストアクリエイターProのデータを見て、以下の兆候がある商品は、リソースを集中投下すれば化ける可能性が高いです。
- アクセスは少ないが、CVR(転換率)が異常に高い
- 例:アクセスは月間50件しかないが、来た人の5%が買っている。→ 露出さえ増やせば爆発的に売れる可能性大。
- 特定のキーワードで検索順位が急上昇している
- 市場のトレンドが来ている証拠です。
- 広告をかけていないのに、自然検索で売れ始めた
- 商品力そのものが強い証拠です。
- 「あわせ買い」で頻繁に選ばれている
- 単体では目立たなくても、クロスセル商材としてのポテンシャルがあります。
- レビューの内容が具体的で熱量が高い
- 「こういう商品を待っていた」という声がある商品は、ニッチですが深い需要があります。
注力商品を絞り込んだ後にやるべき3つのアクション
「育成マップ」で商品を分類したら、次は行動です。特に「③ 期待商品(原石)」を「① 主力商品(エース)」に引き上げるための施策が最優先です。
1. 商品ページの「接客力」を強化する
原石商品は、まだ説明不足であることが多いです。
- スマホのファーストビュー改善: 1枚目の画像でベネフィットが伝わっているか?
- 「ひとけ」の追加: レビューの抜粋や、スタッフのコメントを追加し、安心感を醸成する。
これだけで、CVRはさらに1〜2%改善することがあります。
2. 広告予算の「傾斜配分」
これが最も重要です。「④ 整理対象」の商品にかけている広告(RPP広告など)は全て停止してください。設定を「除外商品」にする勇気が必要です。
そこで浮いた予算を、全て「③ 期待商品」のキーワード入札単価アップに回します。
「広く浅く」ではなく「勝てる場所に一点集中」。これが2026年のEC広告の鉄則です。
3. 在庫リスクを取る(機会損失の防止)
データ分析で「これは売れる」と確信が持てたら、思い切って在庫を積み増します。
ECにおいて最大の罪は「せっかく育てた商品の在庫切れ」です。ランキングが下がり、元の位置に戻すのに3倍の労力がかかります。
まとめ:商品を「捨てる」勇気が、利益を生む
売上を最大化するために必要なのは、新しい商品を増やすことだけではありません。
「今ある商品の中で、どれが稼ぎ頭で、どれがお荷物なのか」を冷徹に見極めることです。
- データを抽出し、4象限に分類する。
- 「原石」を見つけ出し、磨き上げる。
- 見込みのない商品は、勇気を持って撤退戦(在庫処分)を行う。
15年間、現場で悩み続けてわかったことは、「何かを捨てなければ、何かを得ることはできない」という事実です。
まずはあなたの店舗のデータ(CSV)をダウンロードすることから始めてみませんか?そこには、まだ気づいていない「宝の山」と「止血すべき傷口」が眠っているはずです。
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