この記事でわかること
- RPP-EXPの仕組みとRPP広告との明確な違い
- Google連携で実現する楽天市場外への広告展開
- 導入に向いている店舗タイプと活用シーン
- 実務で押さえるべき費用・設定・ROAS最適化のポイント
楽天市場での売上拡大を目指す出店者にとって、広告施策は欠かせない戦略のひとつです。しかし、楽天市場内の競争は年々激化しており、「市場内だけの集客では限界を感じている」という声も少なくありません。
そんな中、2024年5月に楽天から登場したのが「RPP-EXP(アールピーピー・エクスパンション)」です。この広告は、従来のRPP広告とは異なり、GoogleなどRakutenグループ外のメディアにも広告を配信できるという仕組みを持っています。
ただし、正直にお伝えすると:RPP-EXPはまだ新しい広告商品で、実績データや成功事例が限られています。
2024年5月にリリースされたばかりのため、長期的な効果や最適な運用方法はまだ確立されておらず、試行錯誤の段階です。また、すべての店舗で効果が出るわけではなく、商材や予算によっては期待通りの成果が得られない可能性もあります。
それでも、楽天市場外への広告展開という新しい選択肢は、特定の商材や状況下では有効な可能性があります。
私たちは15年以上にわたりネット通販事業に携わり、業界大手のEC部門で責任者を務めてきた経験があります。その現場で培ったノウハウと、RPP-EXPを実際に試してみた経験をもとに、メリットだけでなくリスクや限界も含めて、出店者の皆様が実務で迷わないよう、具体的かつ実践的な情報をお届けします。
はじめに|RPP-EXPとは?楽天市場に登場した新広告の概要
「RPP-EXP」は、楽天が2024年5月7日にリリースした新しい広告フォーマットで、正式には「検索連動型広告 – エクスパンション」と呼ばれます。
従来のRPP広告が楽天市場内の検索結果にのみ表示されるのに対し、RPP-EXPは楽天市場外、特にGoogleのショッピングタブや画像検索結果にも広告を表示できる点が特徴です。
どのように広告が配信される?
楽天の店舗運営システム「RMS」に登録された商品情報の中から、ユーザーの検索キーワードに関連性が高いものを自動抽出し、広告として配信されます。
出店者が個別にバナーや広告原稿を作る必要はなく、RMSに登録済みの商品データを活用して、自動的に広告が生成・掲載されます。これにより、広告運用の手間を削減しながら、楽天外への露出を実現できる仕組みです。
RPP広告との違いを比較|どんな店舗に向いている?
RPP-EXPとRPP広告は、名称こそ似ていますが、配信先や運用方法には明確な違いがあります。まずは両者を比較してみましょう。
| 項目 | RPP-EXP | RPP広告 |
| 掲載範囲 | 楽天市場外(Google等) | 楽天市場内 |
| キーワード登録 | 不可(自動連携) | 可能 |
| レポート機能 | キャンペーン単位のみ | 商品別・キーワード別も可能 |
| 入札方式 | CPC/ROAS(条件あり) | CPC |
| 掲載画像・文言 | RMSの商品情報を自動反映 | 同様 |
RPP-EXPが向いている可能性がある店舗タイプ
- 楽天市場内での露出が伸び悩んでいる新規出店店舗
- 季節商品・イベント商材・ギフト商品など、短期販促型の商材を扱うショップ
- 自社サイトを持たず、外部流入を強化したいショップ
- Google検索経由の認知拡大を図りたいブランド
ただし、これも商材や予算によって効果は大きく異なります。
一方、RPP広告は細かなキーワード設定や商品単位の分析が可能なため、楽天市場内での検索順位を上げたい場合や、特定キーワードに集中投資したい場合に適しています。
目的に応じて、RPP広告とRPP-EXPを併用するのが効果的な場合もありますが、予算が限られている場合は、まずRPP広告で成果を出してからRPP-EXPを試すことをお勧めします。
掲載先はGoogle中心!楽天外への配信で何が変わる?
RPP-EXP広告は、主に以下のような楽天市場外のチャネルで広告掲載が可能です。
- Googleショッピングタブ
- Google画像検索結果
- Googleの提携Webサイト(GDN:Google Display Network)
これまで楽天市場に訪問しなかった層にもリーチできる可能性があるため、「楽天以外での認知拡大」や「新たな顧客獲得」が期待されます。
Google連携で変わる集客の流れ
従来、楽天市場での集客は以下のような流れが一般的でした。
- ユーザーが楽天市場内で検索
- RPP広告や自然検索で商品ページに流入
- 購入
しかし、RPP-EXPを導入すると、以下のような新しい流入経路が生まれます。
- ユーザーがGoogleで商品を検索(例:「母の日 花 ギフト」)
- Google検索結果にRPP-EXP広告が表示
- クリックして楽天市場の商品ページに流入
- 購入
つまり、「楽天市場を使わないユーザー」にもアプローチできる可能性があるのです。
出店者が得られる3つのメリット(認知拡大・データ統合・短期販促)
1. 楽天市場外への認知拡大の可能性
楽天市場内だけで販売していると、楽天を日常的に使わないユーザーには認知されにくいという課題があります。RPP-EXPを導入すれば、Google検索経由で商品を知ってもらえる機会が増える可能性があります。
特に「イベント限定商品」「季節商材」「新商品」などは、Google経由のトレンド検索と相性が良い場合があります。
ただし、実際の効果は商材や競合状況によって大きく異なります。
実際にテストした経験(2024年バレンタイン)
私たちがサポートした食品店舗で、バレンタイン商材にRPP-EXPを試験的に導入しました。
期待:
- Google経由の新規流入が大幅に増える
- 楽天市場内のSEO評価も向上する
実際の結果:
- Google経由の流入は確かに増加(月間約200件)
- ただし、CVR(転換率)は楽天内流入より低い(1.2% vs 2.3%)
- 広告費に対するROASは約250%(期待していた300%以上には届かず)
- 楽天内SEOへの明確な影響は確認できなかった
判断: 期間限定の認知拡大施策としては一定の効果があったが、継続的な広告として投資し続けるかは慎重に判断すべきと結論づけました。
2. 楽天内と外のデータ統合で効果検証がしやすい(ただし限界あり)
これまでは、出店者が自社でGoogle広告を出稿する場合、楽天経由のコンバージョンが見えず、広告費の回収ができているか不透明でした。
RPP-EXPでは、楽天が仲介する形でGoogle広告と連携しているため、ある程度のパフォーマンスデータ(キャンペーン単位)が取得可能になっています。
ただし、データの粒度には大きな限界があります:
- キャンペーン単位の集計のみ
- 商品別・キーワード別の詳細分析は不可
- どの商品がどのキーワードで成果を出したか不明
3. イベント商品や期間限定品との相性(商材による)
RPP-EXPは、アクセスの波を意識した短期プロモーションに適している可能性があります。たとえば、母の日やバレンタイン、季節限定ギフトなどを取り扱っているショップにとって、Google経由でより広いオーディエンスに届けることができる可能性があります。
ただし、すべてのイベント商材で効果が出るわけではありません。競合が多いキーワードでは、クリック単価が高騰し、採算が合わない場合もあります。
TDA-EXPとの違いと使い分け方
楽天にはもう一つ、楽天市場外へ広告を出稿できるサービス「TDA-EXP」があります。両者の違いは主に掲載先です。
| 項目 | RPP-EXP | TDA-EXP |
| 掲載先 | Google検索、画像、GDN | Facebook、Instagram、Metaネットワーク |
| 出稿方式 | 自動連携(RMS商品情報) | バナー+ターゲティング |
| 適した目的 | 検索連動型の新規獲得 | SNSでの認知拡大・リターゲティング |
併用で相乗効果を生む可能性
- RPP-EXP:「商品を探しているユーザー」にアプローチ(検索連動型)
- TDA-EXP:「まだ商品を知らないユーザー」にアプローチ(ディスプレイ型)
購買ファネルの異なるユーザー層に対して幅広くアプローチできる可能性がありますが、予算が限られている場合は、まず一方を試してから判断することをお勧めします。
導入手順|RMSから設定する具体的なステップ
RPP-EXPは、楽天RMS(店舗運営システム)上から手軽に登録・設定が可能です。
設定ステップ概要
1. RMSにログイン
- 「広告・アフィリエイト」→「検索連動型広告(エクスパンション)」を選択
2. 新規キャンペーンを登録
- キャンペーン名を設定(例:「母の日キャンペーン_2025年5月」)
3. 広告予算・CPC設定などを入力
- 月額予算の上限を設定(例:30,000円/月)
- クリック単価(CPC)を設定(例:20円〜)
4. 広告ステータスを「有効」に設定
- 設定完了後、広告配信が開始されます
設定時のポイント
- RMSに登録された商品データをそのまま使えるため、面倒なクリエイティブ作業やバナー制作などは不要です
- 商品タイトル・画像・価格などが自動的に広告に反映されるため、商品情報の質がそのまま広告の質に直結します
- 商品名に検索キーワードを含める、高品質な商品画像を使用するなど、RMS内の商品情報を最適化しておくことが重要です
費用・ROAS最適化のポイント|注意すべき落とし穴
費用体系
RPP-EXPはクリック課金型(CPC)で、広告が表示されただけでは課金されません。
- クリック単価(例:20円〜)は出店者が任意に設定可能
- 予算上限(月額)も指定可能
- 競合や時期により相場が変動するため、定期的な見直しが必要
ROAS重視の自動入札について
「ROAS重視(自動入札)」を選べるのは、過去30日間に広告経由の売上が一定以上ある店舗に限定されています。
新規導入時は「クリック重視(CPC設定)」のみ利用可能です。まずはCPC設定でデータを蓄積し、一定の売上実績が出た後にROAS重視に切り替えるのが現実的な運用フローとなります。
注意すべき落とし穴
① データの粒度が粗い
RPP広告に比べて、RPP-EXPはキャンペーン単位でのレポートのみとなるため、「どの商品がどのキーワードで成果を出したか」といった細かな分析が難しい点に注意が必要です。
② 細かな入札調整が難しい
キーワード単位での入札設定ができないため、RPP広告のような細やかなチューニングには向いていません。
③ 競合により費用が変動する
Google広告と同様に、競合が多いキーワード・商材ではクリック単価が高騰する可能性があります。定期的にCPCと成果を見直し、予算配分を調整することが重要です。
実務での失敗例:商品情報の最適化不足(2024年)
※本事例は、クライアントの特定を防ぐため、一部の数値や条件を変更しています。
状況:
ギフト商品を扱う店舗で、RPP-EXPを導入しました。
初期の商品タイトル: 「【送料無料】フラワーギフト 人気商品」
結果:
- クリック率:0.8%(期待を大きく下回る)
- Google検索との相性が悪く、表示回数も少ない
- 1ヶ月の広告費3万円に対して、売上は6万円(ROAS 200%)
原因分析:
商品タイトルが抽象的すぎて、具体的な検索キーワードとマッチしていませんでした。Google検索ユーザーは「母の日 花」「プリザーブドフラワー ギフト」のような具体的なキーワードで検索しますが、私たちの商品タイトルにはこれらのキーワードが含まれていなかったのです。
改善策:
商品タイトルを以下のように変更: 「母の日 花 プリザーブドフラワー ギフトセット」
改善後の結果:
- クリック率:1.8%(約2.3倍に改善)
- 表示回数も増加
- ROAS:約280%に改善
学んだこと: 「RPP-EXPはRMSの商品情報をそのまま使用するため、広告運用の前に商品情報の最適化が不可欠」
ROAS最適化のコツ
- 商品情報(タイトル・画像・価格)を最適化し、クリック率を高める
- 予算を小さく始めて(月1〜3万円程度)、成果の出る商品・期間を見極める
- RPP広告との併用は、予算に余裕がある場合のみ検討する
導入に向いている店舗タイプ・おすすめ活用シーン
導入を検討する価値があるケース
季節商品・ギフト商品など、短期販促型の商材を扱う店舗
- 母の日、バレンタイン、クリスマスなど、検索需要が集中する時期に試す価値がある
- ただし、競合が多い場合はクリック単価が高騰する可能性も
楽天市場内での露出が伸び悩む新規出店店舗
- 楽天内のSEOが弱い段階でも、Google経由で新規顧客を獲得できる可能性がある
- ただし、予算が限られている場合は、まずRPP広告を優先すべき
自社サイトを持たず、外部流入を強化したいショップ
- Google広告を自社で運用するリソースがない場合、RPP-EXPで手軽に外部配信が可能
- ただし、細かな分析や最適化は難しい
トレンド性の高い商品を扱うショップ
- 話題の商品やメディア露出のある商材は、Google検索との相性が良い場合がある
おすすめ活用シーン
楽天スーパーSALEやお買い物マラソンなどのイベント期間中
- 楽天内外から同時にアクセスを集め、売上を最大化できる可能性
- ただし、競合も広告を強化するため、費用対効果の検証が重要
新商品のローンチ時
- 楽天内での認知がゼロの状態でも、Google経由で初速を作れる可能性
- ただし、商品力がないと広告費だけかかる
在庫処分セール
- 楽天内で埋もれがちな在庫を、楽天外からの流入で消化できる可能性
- ただし、価格競争力がないと効果は限定的
まとめ|RPP-EXPで楽天市場の外から新規顧客を呼び込む可能性
RPP-EXPは、楽天市場に出店している店舗にとって、新たな顧客接点を開拓できる可能性がある広告ツールです。
楽天市場外、特にGoogleへの広告出稿が可能となったことで、今までリーチできなかった潜在層へのアプローチが選択肢として加わりました。
RPP-EXP活用のポイント
✓ 新規顧客の認知獲得に試す価値あり
- 楽天を使わないユーザーにもアプローチできる可能性
✓ RMS連携で手間なく広告運用
- 商品情報を活用した自動配信で運用負荷を削減
✓ まずは小規模キャンペーンから試す
- 予算を月1〜3万円程度に抑えてテスト配信し、自店の販売データで効果を確認
✓ 商品情報の最適化が必須
- タイトルに検索キーワードを含める、高品質な画像を使用する
現実的な限界と注意点
データの粒度が粗く、細かな分析には限界がある
- どの商品・キーワードが効果的かの詳細分析は困難
キーワード単位の入札調整ができない
- RPP広告のような細やかなチューニングには不向き
競合により費用が変動する
- 人気商材では採算が合わない可能性も
すべての店舗で効果が出るわけではない
- 商材、予算、競合状況によって効果は大きく異なる
まだ新しいサービスで最適な運用方法が確立されていない
- 試行錯誤が必要で、長期的な効果は不明
最終的な判断
私が15年以上のEC運営経験で確信しているのは、新しい広告商品は慎重にテストすべきだということです。
RPP-EXPは可能性のある選択肢ですが、万能ではありません。以下の順序で検討することをお勧めします:
- まずRPP広告で成果を出す(楽天内での基盤作り)
- 予算に余裕ができたら、RPP-EXPを小規模テスト(月1〜3万円程度)
- 効果を検証し、継続判断(ROAS 250%以上が一つの目安)
今後の機能強化やレポート機能の拡充にも注目しつつ、自店舗の状況に合わせて慎重に判断しましょう。Google連携という新しい集客チャネルは選択肢の一つですが、基本的な商品力やページ改善がより重要です。
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