はじめに
楽天市場では2025年3月、定期購入サービスに大規模なリニューアルが行われました。この変更は、出店者と購入者の両方にとって大きな影響をもたらすものです。
「定期購入」は、リピート率やLTV(顧客生涯価値)を向上させるための強力な販売手法であり、特にサプリメント・化粧品・飲料・日用品といったリピート性の高い商材で大きな効果を発揮します。
しかし、多くの店舗では「設定が面倒そう」「顧客対応が大変では?」「途中で解約されるのが不安」といった理由で導入に踏み切れないケースも。
そこで本記事では、リニューアル後の楽天市場定期購入の仕組みや変更点、導入メリット・注意点をわかりやすく解説します。また、すでに定期商品を扱っている店舗に向けて、リニューアル対応のチェックポイントも丁寧にご紹介。
定期購入をこれから始めたい方も、既に導入済みの方も、本記事を通じて楽天市場での定期販売を成功させるヒントを得ていただければ幸いです。
第1章:楽天市場の定期購入とは?──仕組みと特徴
楽天市場における「定期購入」とは、ユーザーが一度申し込むだけで、希望の頻度・サイクルで継続的に商品が届く販売形式です。たとえば「毎月1回」「2ヶ月ごとに2個ずつ」など、ニーズに合わせた設定が可能です。
この仕組みは、Amazonの「定期おトク便」などと同様に、ユーザーの利便性と店舗の収益安定化を両立できる販売モデルです。
1-1. どんな商品が定期購入に向いている?
楽天市場で定期購入に適しているのは、以下のような商材です。
- サプリメント・栄養補助食品(例:プロテイン、ビタミン)
- 化粧品・スキンケア用品(例:化粧水、美容液)
- 飲料・ミネラルウォーター(例:炭酸水、コーヒー)
- 日用品(例:洗剤、トイレットペーパー)
共通するポイントは、「生活の中で繰り返し必要になる」ことです。ユーザーにとっては「なくなりそうになったらまた探して注文する」手間が省け、出店者にとっては「定期的な売上」が見込めます。
1-2. 楽天市場独自の仕組みに注意
楽天市場の定期購入には、次のような独自ルールがあります:
- 自動延長は任意設定:自動更新を有効にしていないと、1年間または24回で定期が終了します。
- 申し込み時点の特典が継続される:ポイント倍率や割引内容などは、申し込み時点の条件が以降の注文にも適用されます。
これらは他のECモールとは異なる楽天独自のルールであるため、設定ミスがクレームの原因にならないよう慎重な運用が必要です。
第2章:楽天市場定期購入のメリットと課題
2-1. 定期購入の導入メリット(店舗視点)
(1)売上の安定化
一度契約すれば、解約されない限り毎月売上が発生します。そのため、月ごとの売上予測が立てやすくなり、在庫計画や仕入れの最適化にもつながります。
(2)リピート率の向上
定期購入は「継続的に購入する」ことを前提としているため、リピーターの育成につながります。楽天市場においては、リピート施策が成功の鍵であることは言うまでもありません。
(3)顧客単価とLTVの上昇
定期購入者は、単発購入者よりも購入回数・累計購入金額が高くなる傾向があります。これにより、LTV(顧客生涯価値)が上昇し、利益の最大化が期待できます。
(4)マーケティング施策の実行がしやすい
定期的に購入するユーザーに向けて、LINE配信やメルマガによる関連商品の紹介やアップセルが実施しやすくなります。これにより、他商品の購買促進にもつながります。
2-2. ユーザーにとってのメリット
- 買い忘れ防止:日常的に必要な商品を自動で届けてもらえる安心感
- 割引・送料無料:定期購入限定の価格特典がある場合、ユーザー満足度が高まる
- 柔軟な配送サイクル:リニューアル後はさらに細かい設定が可能に
2-3. 導入前に知っておきたい課題・デメリット
(1)解約率の管理が必須
せっかく顧客を獲得しても、初回だけで解約されてしまうケースは少なくありません。初回購入後に継続してもらえるような仕組みや特典設計が重要です。
(2)初期の広告・特典コスト
定期購入者を獲得するためには、クーポンや送料無料、ポイント変倍などの特典を付与する必要があります。その分、利益確保には継続購入を前提としたLTV計算が必須です。
(3)在庫管理・物流の難易度
突発的な在庫切れが発生した場合、定期購入分の確保が困難になります。継続顧客の信頼を損なわないよう、在庫シミュレーションや配送の平準化が重要になります。
(4)ユーザーサポートの負荷
配送スケジュールの変更・キャンセル・解約対応など、通常購入に比べて問い合わせ数が増加します。マニュアル整備やカスタマー対応体制の強化が求められます。
第3章:楽天市場における定期購入の設定手順
楽天市場の定期購入機能は、RMS(Rakuten Merchant Server)を通じて簡単に設定できます。以下に基本的なステップと、設定時の注意点を解説します。
3-1. 申請手続き
まずは、オプション機能として「定期購入機能」の申請を行います。
申請方法:
RMSトップ > 店舗様向け情報・サービス > オプション機能利用申込・解約 > 定期購入・頒布会購入 のページに進み、「申し込む」ボタンをクリック。
※通常、申請から1営業日以内に利用可能となります。
3-2. 商品登録
申請が承認されると、RMSの商品管理画面に「定期商品登録」ボタンが表示されます。これをクリックし、通常商品と同じ要領で商品情報を入力します。
定期商品固有の設定項目:
- 定期購入ボタンの表示設定
- 初回価格と2回目以降価格の分離
- お届け頻度(毎月/2ヶ月ごとなど)
- ユーザーが配送間隔を選択できるか
- 定期購入用の説明文
- 商品画像(最大3枚)
※重要:定期商品ページに通常商品の「カートに入れる」ボタンを設置すると、定期購入と通常購入が混在してしまうため、混乱の原因となります。設定には十分注意しましょう。
3-3. 特典設計
定期購入の転換率(CVR)を高めるには、「初回限定の特典」や「定期便専用の特典」が不可欠です。たとえば:
- 初回のみ20%OFF
- 定期購入者限定で送料無料
- プレゼント同梱(例:サンプル品)
- 定期購入でポイント5倍
競合と差別化するには、価格以外の「体験的価値(ノベルティや特典)」を設計することもポイントです。
第4章:リニューアルで変わった主なポイントと落とし穴
楽天市場の定期購入機能は、2025年のアップデートで大きく改善されました。しかしその一方で、いくつかの“落とし穴”に注意が必要です。
4-1. 主な変更点
- 自動延長の有無を明確に設定可能に
- お届け日選択機能がより柔軟に(「曜日指定」なども追加)
- 商品登録画面がより視覚的に
- クーポン適用範囲の強化(定期購入商品にもクーポン対応)
これにより、ユーザーの購入体験も向上し、申し込み率が改善する可能性が高まっています。
4-2. 注意点・落とし穴
(1)申し込み時の情報がそのまま継続
たとえば、10月に「ポイント10倍」で申し込んだユーザーには、その後の注文でもずっと「10倍」が適用されます。11月に設定を変更しても、影響はありません。商品情報を更新しても既存ユーザーには適用されない点に注意が必要です。
(2)自動延長を設定していないと終了してしまう
定期購入は、購入回数を設定できますが「自動延長する」にチェックを入れていない場合、最終回で自動的に解約となります。特にリピート戦略においては、設定ミスが解約を招くため、要注意です。
設定場所:
RMSトップ > 店舗設定 > 基本情報設定 > 予約・定期購入・頒布会の設定
(3)楽天の規約により「●回縛り」はできない
他社モールや自社ECと違い、楽天市場では「〇回は必ず継続してください」といった制限を設けることはできません。ユーザーはいつでも自由に解約できるため、「1回でやめられても利益が出る」もしくは「2回目以降も継続したくなる仕掛け」が必要です。
第5章:楽天定期購入を成功させる2つの導線戦略
楽天市場で定期商品を「登録するだけ」では売上につながりません。重要なのは「どのように見つけてもらい」「どのように申し込んでもらうか」という2つの導線づくりです。
5-1. 導線①:知ってもらうための導線を設計する
楽天市場での買い物は、検索・ランキング・広告経由が主な導線です。そのため、定期商品であっても、まずはユーザーに「存在を知ってもらう」ことが必須です。
有効な施策例:
- 商品ページ・カテゴリページ・TOPページに定期商品バナーを設置
- 同梱物に「定期便あります」チラシを封入
- メルマガやLINEで既存顧客に定期商品を案内
- RPP広告・CPC広告で流入を促す
特に、通常商品を購入したユーザーに対して「次回は定期便が便利です」と案内することで、スムーズな導線をつくることができます。
5-2. 導線②:申し込みのハードルを下げる工夫をする
「初回でいきなり定期購入」は、ユーザーにとって心理的ハードルが高いものです。そこで、多くの成功店舗では、以下のような2ステップ戦略を取り入れています。
ステップ型導入モデル:
- 例①:[通常商品] お試し1個 ▶ [2回目以降] 定期商品へ
- 例②:[通常商品] 初回限定クーポン付き ▶ [次回購入] 定期便でお得に
このように、「まずは使ってもらう」導線を確保したうえで、定期購入につなげる構成が有効です。
初回特典モデル:
- 初回20%OFF + 送料無料
- 初回購入者限定ノベルティプレゼント
- 3回継続で特典プレゼント(あくまで案内のみ/縛りではない)
ユーザー目線では「お得」「安心感」「メリット実感」がカギとなるため、初回の設計は綿密に行いましょう。
まとめ:楽天定期購入を店舗の柱に育てよう
定期購入は、単なる「売上の一部」ではなく、うまく育てれば「店舗経営の土台」になる強力な仕組みです。
楽天市場の定期購入リニューアルにより、以前よりも柔軟な設計と運用が可能となった今こそ、導入や改善に踏み出すチャンスです。
本記事でご紹介した「仕組み」「設定方法」「メリット・デメリット」「成功導線」などのポイントをもとに、自店舗の定期戦略を見直してみてください。
繰り返しになりますが、ポイントは3つ:
- 導線設計(知ってもらい・申し込んでもらう)
- 継続率を高める設計(特典・満足度)
- 店舗全体戦略への統合(LTVの最大化)
「売上が不安定…」「リピート率が伸び悩んでいる」という方にとって、楽天定期購入は課題解決の強力な一手になるかもしれません。今すぐ見直し、強化してみてはいかがでしょうか?
もし定期便の設定や申し込み率、継続率などにお悩みなら、ぜひ私達にご相談ください。定期施策の経験豊富なコンサルタントが御社を全力でサポートいたします。