「あす楽」という言葉に惑わされてはいけない
「注文した翌日に届く」。
この体験を楽天市場では長らく「あす楽」と呼んでいました。しかし、2026年の今、この言葉の定義は大きく変わっています。
15年以上ECの現場に立ち続けていますが、ここ数年の楽天の物流改革は、過去類を見ないほどドラスティックです。はっきり申し上げますが、かつての「あす楽」感覚で現在の「最強配送」に取り組むと、間違いなく現場が破綻します。
本記事では、名称が変わっただけではない、裏側の「過酷な認定基準」と、それをクリアして売上を伸ばすための現実的な戦略について解説します。
1. そもそも今、「あす楽」はどうなっているのか?
まず事実関係を整理しましょう。かつて商品画像の下に輝いていた「あす楽」というアイコン(ラベル)は、2024年に廃止されました。
現在、それに代わって表示されているのが「最強配送」ラベルです。
お客様は依然として「明日届くもの」を探す際に「あす楽」という言葉(チェックボックス等)を使いますが、店舗側が目指すべきゴールは、この「最強配送」ラベルの獲得一択となりました。
これは単なる名称変更ではありません。「スピード」に加えて「品質」と「正確さ」が絶対条件になったことを意味します。
2. なぜ苦労してまで「最強配送」を目指すのか? 3つの実利
認定ハードルが高いにも関わらず、なぜ我々コンサルタントは「最強配送」の取得を推奨するのか。
それは、これが単なる「お客様への約束」である以上に、「楽天市場のアルゴリズムに対する最強のアピール」だからです。
具体的には、以下の3つの強烈なメリットがあります。
- 転換率(CVR)の劇的な向上:
「今すぐ欲しい」という緊急需要を取り込めるため、多少価格が高くても選ばれる確率が上がります。体感値として、ラベル取得前後でCVRが1.5倍近く跳ね上がったケースも珍しくありません。 - SEO評価(検索順位)の底上げ:
楽天の検索エンジンは「ユーザーに有益な店舗」を優遇します。現在、配送スピードと品質はその最重要指標であり、露出拡大(検索上位表示)には欠かせないパスポートです。 - LTV(顧客生涯価値)への貢献:
「早く、確実に届く=信頼できる」という刷り込みは、次回指名買いの強力な動機になります。特に「最強配送」は品質も保証されているため、顧客満足度が毀損されにくいのが特徴です。
これらは極めて魅力的な果実です。しかし、問題はこの果実を手にするための「オペレーションの現実」です。
3. 「最強配送」の正体と、理不尽なまでの認定ハードル
「最強配送」とは、楽天が認めた「最高品質の物流体験」の証明書です。
これを得るための認定条件は、自社出荷を行っている店舗にとっては「悪夢」に近い厳しさです。
- 納期遵守率96%以上:
台風が来ようが、スタッフが風邪を引こうが、約束した日の通りに届ける確率を96%以上に維持しなければなりません。 - 365日・年中無休のプレッシャー:
原則として土日祝日を含む出荷体制が求められます(※商品設定により緩和措置等はありますが、競合に勝つには必須です)。 - 日時指定への対応:
旧「あす楽」は「とにかく明日着けばいい(時間指定不可)」でしたが、最強配送は「明日届くし、時間の指定もできる」ことが求められます。
つまり、「早さ」だけでなく「柔軟さ」と「正確さ」の全てを満たせというのが、楽天からの要求なのです。
4. 【実録】自社出荷で「最強配送」を維持しようとして起きた悲劇
「RSL(楽天スーパーロジスティクス)を使うと手数料がかかる。だから自社で頑張る」。
そう決意したある店長(月商500万規模・アパレル)の事例をお話しします。
彼は、利益率を守るために自社スタッフのシフトを組み替え、土日も交代制で出勤し、「最強配送」ラベルを維持しようとしました。
最初の数ヶ月、売上は確かに伸びました。ラベルのSEO効果は絶大だったからです。
しかし、歪みはすぐに現れました。
ギリギリの人員で回していたため、ベテラン社員が一人体調を崩しただけでオペレーションが崩壊。発送遅延が一度起きると、リカバリーのために他のスタッフが深夜まで残業し、疲労から梱包ミス(サイズ違いの誤出荷)が発生。
結果、「納期遵守率」が基準を割り込み、ある日突然ラベルが剥奪されました。
残ったのは、疲れ切ったスタッフと、ラベル剥奪による売上急落、そして低下した店舗レビューだけでした。
「利益を守るための自社出荷」が、結果として「店舗の資産(人・信用)」を食いつぶしてしまったのです。
5. どこから「委託(RSL)」に切り替えるべきか?
「最強配送」は強力な武器ですが、自社出荷で維持するには限界があります。
私の経験則として、以下のラインを超えたら、迷わず「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」などの外部委託を検討すべきです。
- 月間出荷件数が300件を超えた時
- 土日の出荷作業が経営者や店長の「持ち出し業務」になり始めた時
RSLを利用すれば、前述した厳しい基準(遵守率や365日稼働)のほとんどをシステムが自動でクリアしてくれます。「最強配送」ラベルもほぼ自動的に付与されます。
手数料はかかりますが、「配送品質の維持にかかる精神的・人的コスト」と「ラベルによる売上増」を天秤にかければ、多くの場合、委託の方が利益は残ります。
まとめ:物流は「気合」ではなく「システム」で解決する
2025年の楽天市場において、「最強配送」に対応しないことは、戦場に丸腰で行くようなものです。
しかし、それを「根性」で乗り切ろうとしないでください。
- まずは売れ筋の上位20%の商品だけをRSLに預ける。
- その商品で確実に「最強配送」ラベルを取り、集客する。
- 残りの商品は無理のない範囲で配送する。
この「使い分け」こそが、現場を疲弊させずに売上を最大化する、プロの物流戦略です。
「あす楽」という言葉の響きに惑わされず、冷徹に「自社のキャパシティ」を見極めてください。
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